矢は放たれた!ラッセル・クロウの『ロビン・フッド』でカンヌオープニング
オープニングは『ロビン・フッド』。リドリー・スコットとラッセル・クロウの『グラディエイター』(00)コンビが再びコスチュームものに挑む。今回はラッセルがプロデューサーにも加わり、並々ならぬ熱意と上機嫌でカンヌ入り。記者会見が行われた。
ロビンフッドといえばハリウッド創世記から何回も映画化されてきた定番活劇。今回は「リアリティを重視して、当時のことを調べまくった」と語るラッセル。そこに現代に通ずる視点を加え“伝説になる前のロビン・ロングステールの物語”を作り上げた。
時は12世紀。十字軍に参加したロビンは、ひょんなことから獅子王戦死の報を携えイギリスに帰るロクスリー卿の死に立ち会い、彼になりすますことになる。ロクスリーの家では年老いた父と10日間だけ一緒に暮らした妻マリアンがロクスリーの帰りを10年間待ち続けていた。ロビンはロクスリーの身代わりとなり平穏な日々を過ごすが、やがてイギリスとフランスの戦いに巻き込まれていく。野望・欲望・裏切りに対抗するのは、信頼と愛。海岸を朱に染めて、英仏因縁のの戦いが幕を開く。
美しくたくましいマリアン像、ロビンがムスリムを殺戮する十字軍に疑問を持つ、など現代的な解釈を加えたところも見所だが、やはりこのコンビならではのアクションシーンが白眉だ。『プライベート・ライアン』(98)+『レッド・クリフ』(08)×『300 スリーハンドレッド』(07)=リドリー印の『ロビン・フッド』といった感じ。
「ロビン・フッドといえば緑のタイツを履いた男というイメージだけれど、今回はタイツを履いてないからね(笑)」とラッセルが言えば、「今まで多くの素晴らしい女優たちがマリアンを演じてきたけれど、申し訳ないけど誰も覚えていないの。だからまっさらな気持ちで私のマリアンを作り上げられたわ」とケイト。
ごきげんな主役ふたりと記者たちの掛け合い漫才のような会見から63回目のカンヌ映画祭は始まった。これから12日間、カンヌの街は映画一色に染まる。最後に黄金の椰子の葉(パルム・ドール)を射止めるのは誰か。まさに矢は、放たれた。【シネマアナリスト/まつかわゆま】