アルフォンソ・キュアロンが金獅子賞!第75回ヴェネチア国際映画祭受賞結果速報
現地時間8日に開催された第75回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門の授賞式で、アルフォンソ・キュアロン監督の最新作でNetflix制作の『Roma(原題)』が最高賞に当たる金獅子賞に輝いた。キュアロン監督と今年同部門の審査員長を務めたギレルモ・デル・トロは同じメキシコ出身の盟友として知られており、2人が壇上で熱烈なハグをすると会場からは大きな拍手が沸き起こった。
『Roma(原題)』は70年代のメキシコシティのローマ地区で暮らす先住民の血を引く女性を中心に、当時のメキシコの変化を描き出す。キュアロン監督は『天国の口、終りの楽園。』(01)でヴェネチア国際映画祭の脚本賞を受賞し(同作ではディエゴ・ルナとガエル・ガルシア・ベルナルの2人が新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞している)注目を集め、『ゼロ・グラビティ』(13)でアカデミー賞監督賞を受賞。
昨年、金獅子賞を受賞したデル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)が、第90回アカデミー賞で作品賞と監督賞など4部門を席巻するなど、近年アカデミー賞との関連が非常に強くなっているヴェネチア国際映画祭。キュアロン監督は、本作で悲願の作品賞受賞を目指すことになる。またしてもメキシコ出身監督がアカデミー賞を賑わすことは間違いない。
また、第2位にあたる審査員大賞を受賞したのはエマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、オリヴィア・コールマンの三大女優の共演が大きな話題を集めている『The Favourite(原題)』。ヨルゴス・ランティモス監督は『Alps(英題)』(11)で脚本賞を受賞して以来となるヴェネチア国際映画祭での受賞。『籠の中の乙女』(09)でカンヌ国際映画祭“ある視点”賞を受賞して以降、5作連続で三大映画祭受賞を果たした。
さらに同作では病弱な女王を演じたオリヴィア・コールマンが女優賞に輝いた。イギリス出身のオリヴィアはこれまでテレビ作品を中心に活躍。トム・ヒドルストン主演のドラマ「ナイト・マネージャー」では、ゴールデン・グローブ賞の女優賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)を受賞。ランティモス監督の『ロブスター』(15)やケネス・ブラナー監督の『オリエント急行殺人事件』(17)に出演するなど、今後映画界での大きな飛躍が予感されている。
他には『ディーパンの闘い』(15)でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した経験を持つフランスの鬼才ジャック・オディアール監督が、英語作品に挑んだ西部劇『The Sisters Brothers(原題)』で監督賞を受賞し、男優賞は『At Eternity's Gate原題)』のウィレム・デフォー。脚本賞は輝かしい賞歴を誇るコーエン兄弟の最新作で、Netflix制作の『The Ballad of Buster Scruggs(原題)』と、例年にも増してアカデミー賞とのリンクを予感させる受賞結果となった。
また昨年から映画界全体で性差別是正への意識が強くなってきた中、今年のコンペティション部門に女性監督の作品が1作品しか選出されなかったことを問題視する声があがっていた。その影響もあってか、唯一の女性監督だったジェニファー・ケント監督の『The Nightingale(原題)』が審査員特別賞と、新人賞にあたるマルチェロ・マストロヤンニ賞の2冠に輝いた。一方で日本から出品された塚本晋也監督の『斬、』(11月24日公開)は惜しくも受賞を逃した。
【第75回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門受賞結果】
・金獅子賞(作品賞):『Roma(原題)』アルフォンソ・キュアロン監督
・審査員大賞: 『The Favourite(原題)』ヨルゴス・ランティモス監督
・審査員特別賞: 『The Nightingale(原題)』ジェニファー・ケント監督
・監督賞:ジャック・オディアール監督『The Sisters Brothers(原題)』
・男優賞: ウィレム・デフォー『At Eternity’s Gate(原題)』
・女優賞: オリヴィア・コールマン『The Favourite(原題)』
・マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人賞): Baykali Ganambarr『The Nightingale(原題)』
・脚本賞: 『The Ballad of Buster Scruggs(原題)』ジョエル&イーサン・コーエン監督
・生涯金獅子賞: ヴェネッサ・レッドグレイヴ、デヴィッド・クローネンバーグ
文/久保田 和馬