『ダークナイト』超え!『アクアマン』がDC映画最高記録を更新したワケ
米ウェブサイト「BoxOfficeMojo」が発表したデータによると、『アクアマン』の米国内での興行収入は、1月最終週末までで3億1650万ドル(約345億円)を突破、米国外の興行収入の7億7420万ドル(約846億円)と合わせると、世界興収が10億9000万ドル(約1190億円)を記録した。
これは、DCコミックスの実写映画で興行収入がトップだった、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト ライジング』(12)の10億8500万ドル(約1188億円)を上回り、DCコミックス映画で興収トップの作品になったことを意味する。また本作はワーナー・ブラザース映画全作品の世界興収ランキングでも『ハリー・ポッターと死の秘宝Part2』(11)に次ぐ歴代2位に君臨した。
『アクアマン』は、バットマン、スーパーマン、ワンダーウーマンらの世界観が共存する“DCエクステンデッド・ユニバース” (DCEU)の一作品で、海底の巨大な帝国アトランティスと、人間としての地上の世界の両方にルーツをもつヒーロー、アクアマンの活躍を描く物語だ。主役のアクアマンを演じるのは、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16)や『ジャスティス・リーグ』(17)でも同役を演じたジェイソン・モモア。
『アクアマン』の成功の背景には、やはりモモアの存在感が大きい。彼は193cmの身長と特徴ある顔立ちの俳優だが、知名度が上がったのは近年の話だ。『アクアマン』の前に主演した作品と言えば、『コナン・ザ・バーバリアン』(11)だが、彼の知名度に大きな影響があったのは、やはり大ヒットテレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のシーズン1にカール・ドロゴとして出演してからだろう。同役はシーズン1以降登場していないにもかかわらず、米国ではハロウィンやコミコンなどでカールのコスプレをするファンが多く見られ、いまでも一番好きなキャラクターだと言うファンもいるほどだ。
また、ほかには“アクアマン”というキャラクターが、DCコミックスのバットマンやスーパーマンといったキャラクターと比べると知名度が低いキャラクターだったこともあるかもしれない。41年に初めてアクアマンが描かれたコミックでは、彼はブロンドの青い目の白人男性という設定だった。しかし今回改めて映画化されることになり、現代の価値観を反映させてハワイの先住民族やヨーロッパの血を引くモモアを配役し、新たなキャラクター像を築き上げたことに対してファンも納得だったのかもしれない。
メガホンをとったのは、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(15)などで知られるジェームズ・ワン監督。2つの異なるフランチャイズ(DCEU&「ワイルド・スピード」)で世界興収が10億ドルを超えるヒット作をそれぞれ生みだしたことになる。
アクアマンを支えるヒロイン、海底国ゼベルの王女メラ役は、アンバー・ハードが演じている。彼女はDV被害を受けたとして元夫ジョニー・デップを訴えたことでも有名だが、『アクアマン』のヒットに伴い、いままでジョニー・デップが出演したヒット作すべて(06年の『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』の10億9000万ドルが最高)を上回るヒット作に出演したことになった。
『アクアマン』が世界的にヒットした大きな要因はやはり、本作が家族で映画に行く醍醐味を味わせてくれるからだろう。クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(08)や、ザック・スナイダー監督の『マン・オブ・スティール』(13)など、大人な目線でダークに描くDCコミックスの世界にフォーカスしていたワーナー・ブラザースだが、本作は劇場で鑑賞するに値する迫力のある映像と物語を、純粋にエンタテインメントとして楽しむことができる。
米国では、クリスマス・ホリデー期間の18年12月21日に公開されたのだが、年末年始に映画を観に行く習慣がある米国の家庭では、やはり家族全員が楽しめる作品の魅力が興行収入にも反映されたのだろう。『アクアマン』は2月8日(金)から公開される。
LA在住/小池かおる