『ハリー・ポッターと死の秘宝』デヴィッド・イェーツ監督インタビュー|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『ハリー・ポッターと死の秘宝』デヴィッド・イェーツ監督インタビュー

インタビュー

『ハリー・ポッターと死の秘宝』デヴィッド・イェーツ監督インタビュー

――本作では主演3人の演技が重要な位置を占めていると思いますが、どのような演技指導をされたのでしょうか?

「アプローチとしては前作『謎のプリンス』(09)と変わりません。今回は色々と探るのに面白いものがあったかもしれません。ただ私たちは常に本物の瞬間というものを探しています。これが本当に自分はリアルに感じられるか? もし自分がハーマイオニーのような状態だったらどうするか? それをキャラクターを通して感情表現していくというアプローチ方法を取っています。以前から3人と一緒に仕事をしているので、感情を探るというのは今までもやってきたことですが、彼らが最初に今回の『死の秘宝』の脚本を読んだ時、非常に興奮していました。初めてホグワーツ魔法学校が出ることと、よりテーマ的に大人になっていたこと。彼ら自身も大人になっているので、自分の中に探せる何かがあるのではないかと思います」

――今回、仲間たちの死のシーンなど感情的場面が多いですが、撮影現場ではどうだったのでしょうか? 監督としてどのような演出を心がけたのでしょう?

「確かに死のシーンはあります。大きく2つ、そのポイントがあると思います。ドビーの死のシーンですが、実際に彼の体を抱くことができたことが非常に助けになりました。グリーンバックの中で演技をするということは、とても難しいです。リアルな物はないので全て俳優の創造力に任されています。実際に手にとって触れる物があればあるほど良い。実は、ドビー役のダイアンという2フィートほどの小柄で素敵な女性がいます。ダニエルの腕の中に倒れこみ、ダニエルが実際のシーンを再現しながら演技をすることが一番役に立ちました。もう1つは、ロケ地での撮影だったので実際に風を感じ、手の間に砂が流れ落ちる。寒く湿っている気候だったり。そのようなことが演出をするうえでも助けになりました。特に若い出演者にとって、身近な人の死を経験していないと、その死や悲しみについて語るのが非常に難しい。人生のある時点で経験することですが、深い瞬間なので若い出演者に話しをするのは大変でしたが、まず語ることから始めて、気持ちを理解してもらいました。そして、どのシーンでもある雰囲気、あるエネルギーを探ります。例えば、ケンカのシーンでは摩擦があるようなエネルギー。ドビーの死は喪失感のエネルギー。その場その場の特別なエネルギーを常に探しています。PART2では最後のホグワーツ魔法学校のシーンが出てきますが、そこで私は『みんな何年一緒に仕事をしている? もう10年くらいになるよね。今日がキャラクターとしてみんなといられる最後の日なんだよ』と伝えた途端、彼らはすぐに、今日は特別な日と理解し、とても感情的なものが流れてきた。それがシーンにある種の柔らかさを入れたと思う。もちろん、学校について、今までのヴォルデモート卿との戦いについて話し合っただけでなく、これで最後という気持ちがドラマになっていると思います」

――原作のJ・K・ローリングとはどのような話をされましたか? また彼女から何か注文はあったのでしょうか?

「私たちは毎回、J・K・ローリングに脚本を送っています。OKが出ることを願って送っているのですが、彼女はいつも私たちを支持してくれて親切にしてくれます。実は昨日もPART2について彼女と話をし、説明する機会がありました。いつもそうですが、彼女は助けになってくれます。私が関わった4作品についても、支持的でほとんど何も言いませんでした。彼女にとってとても重要なことを数点話すだけ。例えば、私が初めて関わった第5作『不死鳥の騎士団』(07)の時に、『色々なクリーチャーを入れておいてください』とリクエストをいただきました。その時点ではまだ彼女はシリーズを執筆中で、後でその登場するクリーチャーを戻すつもりだったのです。基本的には脚本を尊重してくださる方です」

――『死の秘宝』をPART1とPART2に分けた理由は? また注意した点はなんでしょうか?

「2つ理由があります。毎回ファンの中には不満を持っている方がいます。どうして原作の部分を描かないのかと。今回はファンの方をがっかりさせないように、なるべく原作の内容を取り入れたいと思いました。もう1つは、脚本家のスティーブ・クローブスがもがいていました。私は大きなセットで入れたい部分がありました。そうして全てのものを取り入れると、膨大な予算になってしまい、脚本も5、6時間の映画になってしまう。色々と検討した中で、この作品は長いので2つの作品に仕上げ、色々な要素を入れたかった。当初はスタジオ側はファンが嫌がるのではないかと難色を示していたのですが、純粋にクリエィテブな理由で2作に分けたいと思いました。シリーズを楽しみしているファンは多くいるので、じっくりと時間をかけたいという理由もありました。最後の原作は2作に分けても充分に内容があると思いました。前編後編ともにトーンが違う映画になります。PART1は、生で荒々しいロードムービーに。PART2は、オペラ調の壮大なバトルシーンもあります。時間と材料を使い切るいうことで分け、スタジオ側も支持してくれました。今、PART2の編集が終わりまして、実は昨日見ました。PART2は自分で見ても面白い!と思いました。スケール感もあると思います」

――ハリーとハーマイオニーのダンスシーンは原作になかったと思います。PART2でも同様な演出はありますか?

「バトルのシーンはオリジナルのものを入れてアクションを大きくしました。もう1つは、原作にあるエピソードを移動させています。ハリー、ロンとハーマイオニーが分霊箱を破壊するシーンが『秘密の部屋』(02)に描かれていますが、映画の中と原作とでは描かれているタイミングが違います」

――最後に日本のファンへのメッセージをお願いします

「PART1の公開にワクワクしています。皆さんには『ハリー・ポッター』シリーズを何度も見ていただいて感謝しています。本作でも楽しんでいただけると嬉しいです」

作品情報へ