周防正行監督が5年ぶりの最新作『カツベン!』と共に47都道府県を回る!札幌から全国行脚へ出発
『Shall we ダンス?』(96)や『舞妓はレディ』(14)などで知られる周防正行監督が、最新作『カツベン!』を引っ提げて47都道府県を回る“周防正行の日本全国しゃべくり道中”をスタート。本日、北海道のさっぽろ羊ヶ丘展望台にて出発式が行われた。
いまからおよそ100年前、映画が「活動写真」と呼ばれ、まだサイレントでモノクロだった時代は、楽士の奏でる音楽と共に独自の“しゃべり”で物語を作り上げ、観客たちを映画の世界に誘う「活動弁士」、通称“活弁”が活躍していた。いまの時代にそんな活動弁士の世界を描くことの意図について、監督は「活動写真というものが日本に入ってきた時、写真が動くということに当時の人々は驚がくし、最先端エンタテインメントとして楽しみました。しかし日本映画のスタートについて多くの人は知らないし、映画をスクリーンの横に人が立って解説したこと、その人を活動弁士と呼ぶことも知らない。映画の歴史は技術革新の歴史でもあって、フィルムで撮影して上映するのが常識だったのが、いまではデジタルになっているように、無声映画時代に大スターと言われた活動弁士という存在も映画に音がつくと仕事を失いました。そういうことを繰り返しながら変化した現代の映画を楽しんでいるけど、始まりの世界で映画がどのようなものだったかを知らない皆さんに観ていただきたい」と語った。
製作のきっかけとなったのは、脚本・助監督を務める片島章三が長年温めていたシナリオだったそう。監督は「活動弁士の解説で映画を楽しむというのが、海外では見られない日本独特のスタイルだったと知って驚きました。取材を重ねている僕自身もおもしろかったです。なぜ日本人にとって活動弁士が必要だったのかと考えると、日本の語り芸の文化が背景にあるんだとわかりました。この映画で、日本独特の上映スタイルを世界の方々にも知ってもらいたいです」と熱い想いを明かす。
これまで日本アカデミー賞最優秀監督賞を2度受賞している周防監督の、5年ぶりの最新作とあって期待がかかるが、本作は自身にとっても大事な作品になったそう。「まず技術の面から言うと、今回初めてデジタルで撮影しました。いままでフィルムで撮ってきたのに、活動写真についての映画でデジタルになったというのも、時代なんだなと思いました(笑)。ただ、劇中で映される当時の活動写真も実はオリジナルで撮っていて、何本かは完全にモノクロフィルムで撮影しました。初めてサイレント映画をフィルムで撮る経験をできたのもうれしかったですし、活動写真というものをもう一度考え直すきっかけになった。いまの技術なら、CGや編集技術でスピーディに展開するアクションも、細かいカット割りをせずに生身の人間を撮るおもしろさを実感できた。映画の作り方を振り返るという意味で、すごく大事な映画になりました」
さらに、北海道開拓の父と呼ばれたクラーク博士の名言にかけて、今回の全国行脚への“大志”を尋ねられた監督は、「1895年にリュミエール兄弟がパリで映画を上映してから、あっという間に世界へ広がりました。『カツベン!』もこの北海道を皮切りに、あっという間に日本全国に伝わるよう頑張っていきたい。それくらいの衝撃を与えられるように」と意義込みを見せると共に、「『それでもボクはやってない』の時も、冤罪裁判を扱う映画だったため、日本各地を回って法学部の学生とディスカッションしたことがあります。今回は活動写真という、映画の原点についていろんな人と話せるのが楽しみです!」とうれしそうに話した。
若手実力派俳優の成田凌が映画初主演を果たし、一から活動弁士の役作りに挑んだということでも話題の『カツベン!』は、12月13日(金)より公開となる。周防監督の壮大な全国行脚の様子をチェックしながら、公開を楽しみに待ちたい!
取材・文/編集部