【今週の☆☆☆】上田慎一郎監督の新作長編『スペシャルアクターズ』や人間関係のほころびをえぐる『楽園』など週末観るならこの3本!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、10月18日から今週末の公開作品をピックアップ。綾野剛、杉咲花、佐藤浩市ら豪華演技派キャストがそろい踏みの『楽園』や、デンマーク出身の人気俳優マッツ・ミケルセンが主演を務めるヒューマンドラマ、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が脚本・編集を手掛けた劇場長編作など、バラエティあふれる作品ばかり!
売れない役者VSカルト集団…スリルあり、笑いありのエンタメ作『スペシャルアクターズ』(公開中)
『カメラを止めるな!』(17)を大ヒットさせた上田慎一郎監督の待望の最新作は、プレッシャーで気絶しそうになった同監督が、オーディションで1500人の中から15人の無名の役者を選び、彼らに合わせて、しかも撮影直前に当初の台本のすべてをボツにして書き下ろしたという、スリルと笑いのエンターテインメント。極限まで緊張すると気絶してしまう売れない役者が、弟に誘われて入った俳優事務所“スペシャルアクターズ”の仲間たちと、芝居の力で旅館の乗っ取りを謀るカルト集団に立ち向かうが…。
前作と同じように、映画を観た時のおもしろさが損なわれるのでこれ以上は書かない。けれど、上田監督が大好きなジャンル映画のエッセンスを詰め込んだ今作も、“カメ止め”とは違う切り口ながら、観る者を気持ちよく裏切る予想不可能な展開になっていてビックリ!上田ワールドならではの確かなカメラワークやスピーディな展開も健在で、鮮やかなラストシーンでは今回も唸ってしまう。とにかく事前情報を一切封印して映画館に行けば、めちゃくちゃ盛り上がれるはずだ。(映画ライター・イソガイマサト)
複数の事件が絡み合い、罪なき人々を翻弄する『楽園』(公開中)
吉田修一の短編集「犯罪小説集」の中の2編を、監督・瀬々敬久が1編に編み上げたヒューマン・サスペンス。青田に囲まれたY字路で起きた少女失踪事件から12年後。事件未解決のまま、再び酷似した少女失踪事件が起きる。一方、Y字路に続く集落で村八分にされた男が、次第に正気を失い、凄惨な事件を起こす――。失踪事件の容疑者に綾野剛、失踪直前まで少女と居た友人の12年後に杉咲花、村八分にされる男に佐藤浩市。脇も、柄本明や村上虹郎ら新旧の演技派が顔をそろえ、それだけでも満腹感!人間が抱える業や闇、ほんの小さなボタンの掛け違いで起きる人間関係のほころびを抉る触感は、いかにも瀬々監督。とはいえ、人間の衝動や業や善悪の危うさなどをギリギリまで攻め、炙りだしてきた過去作に比すると、原作と異なる結末も含め、本作における語り口は少しだけ意外な印象も。(映画ライター・折田千鶴子)
マッツの怪演が光る!予測不能な展開から目が離せない『アダムズ・アップル』(10月19日公開)
“北欧の至宝”と呼ばれる人気俳優マッツ・ミケルセンが主演を務めた2005年作品を初公開。一部の北欧映画ファンの間で絶賛を博していた本作は、神など信じないネオナチのコワモテ男アダムが仮釈放後の更生プログラムの一環で、田舎の教会にやってくる導入部から驚きの連続だ。アダムを迎えたイヴァンは奇妙な言動が目立つ牧師で、彼の教会には荒んだ前科者2人が住みついている。そんな登場人物たちの確執を描く人間模様は、ブラックユーモア、ホラー、バイオレンスに宗教的な要素も入り混じって予測不可能。不死身の牧師に扮したミケルセンの血まみれの怪演にも唖然とせずにいられない。そして人間の心の闇をえぐりながらも、最後にはまさかの奇跡的な感動さえ待ち受ける異色作なのだ!(映画ライター・高橋諭治)
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週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス