秀作を続々送り出す工房 ドリームワークス・アニメーションの大いなる25年間(その3)
12月20日(金)に公開となる『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』。同シリーズをはじめ、多くの傑作を生み出してきたドリームワークス・アニメーション(DWA)の、第1作『アンツ』以来の歩みを、代表作と共に辿る!
新時代の扉を開いた『ヒックとドラゴン』
番外編『マスター・ファイブの秘密』の製作や、10年から放送されたTVシリーズ『カンフー・パンダ ザ・シリーズ』も人気を博し、『カンフー・パンダ』は多方面で大躍進。第1作が公開された時期は北京オリンピックとも重なり、アジアに多くの目が向けられたタイミングでもあった。本シリーズの成功で、ドリームワークス・アニメーションは、まだまだオリジナルで面白い作品をつくっていけるという自信を深めたに違いない。
09年には地球の女性+モンスターたちが一丸となって立ち向かう『モンスターVSエイリアン』を公開するも、『カンフー・パンダ』に比べると感動要素が少なかったというのもあり、そこまでの大ヒットには至らなかった。
そんな時、ドリームワークス・アニメーションにディズニーから転がり込んできたのが、『リロ&スティッチ』を生み出したクリス・サンダースとディーン・デュボアだった。実は2人はディズニーで犬を主人公にした作品の製作に取りかかっていたが、途中でその企画が頓挫(後にこの企画は『ボルト』(08)というディズニー・アニメーションに転じる)。2人はカッツェンバーグのもとで作品をつくることになったのだ。
かくして誕生したのが『ヒックとドラゴン』(10)だった。宮崎駿作品の影響を強く受けたサンダースとデュボアは、カートゥーン志向にひた走っていたドリームワークス・アニメーションの流れを変える。映画ならではのユーモアと感動、そして確たるテーマ性をもった本作は大ヒット!ディズニーやピクサーへの意識に縛られつつ、反骨精神をもって大人の鑑賞にも耐えうるアニメーションをつくろうとあがいてきたドリームワークス・アニメーションが、ついに辿り着いた新境地と言えるのが『ヒックとドラゴン』なのだ。このシリーズは熱狂をもって世界中の観客に受け入れられ、いよいよ日本公開となる最新作『〜聖地への冒険』は、世界54か国で興収ランキング1位を獲得している。
同作の成功は、ドリームワークス・アニメーションの大人向け作品への挑戦を再度促すことになる。そして普段は平凡な赤ん坊だが両親がいなくなるとおっさん言葉のビジネスマンになる『ボス・ベイビー』(17)という、新たなヒット・シリーズが生まれた。ドリームワークス・アニメーションの長編は、『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』(12)以降は日本においてはほとんど劇場公開されなくなっていたが、『ボス・ベイビー』は日本の映画ファンに改めてドリームワークス・アニメーションのパワーを見せつける会心のヒットとなったのだ。挑戦を続けてきたドリームワークス・アニメーションが、今後もどんな進化を見せてくれるのか、期待したい。
2010
『ヒックとドラゴン』『シュレック フォーエバー』『メガマインド』公開
2011
『カンフー・パンダ2』『長ぐつをはいたネコ』公開
2012
『マダガスカル3』『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』公開。パラマウントによるDWAの配給が終了
2013
20世紀フォックスの配給スタート。『クルードさんちのはじめての冒険』『ターボ』公開
2014
『天才犬ピーボ博士のタイムトラベル』『ヒックとドラゴン2』『ペンギンズ FROM マダガスカル ザ・ムービー』公開
2015
『ホーム 宇宙人ブーヴのゆかいな大冒険』公開。Netflixが日本でローンチ、DWAのオリジナル 作品も配信される
2016
『カンフー・パンダ3』『トロールズ』公開
2017
『ボス・ベイビー』『スーパーヒーロー・パンツマン』公開
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2019
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』公開、『アボミナブル(原)』全米公開
2020
『トロールズ ワールド・ツアー(原)』公開予定
(了)
文/横森文【DVD&動画配信でーた】