無精ヒゲの山崎賢人、目つきも色っぽい…!映画『劇場』エキストラ体験レポート
「“又吉直樹”の名前がなければ、絶対に通らない企画でした」
山崎と伊藤が座るテーブルの近くに、エキストラとして、座ったのは、私のようなライターをはじめ、編集者、映画評論家たちだ。行定監督から「自由に声を出して、言いたいことを言ってもらって大丈夫です」とリクエストされたので、私のいたテーブルでは、各自が映画業界でのホットな話題を持ちだし楽しく談笑していく。気がつけば、このフリートークは大いに盛り上がっていった。
撮影終了後に囲みのインタビューが行われ、行定監督の口から本作に懸けた想いを聞くことができた。まず監督は、我々が今回、エキストラとして呼ばれた理由についてこう語った。
「こういう文化的な仕事、業界に携わっている人は、顔つきが違うと思っています。今日撮影したのは、山崎賢人演じる主人公の永田が、自分は劇作家なのに、気が進まないけど“そういう系の仕事”もしなければいけないという屈辱を感じるというシーンでした。永田がちょっと浮いている存在となるには、本物の演劇関係者やライター、批評家たちが、好き勝手楽しそうに、毒っ気のあるしゃべり方をしているという画が一番いいと思ったんです。実際、超リアルで良かったなと思いました」。
後日、完成した映画を観てみると、私は後ろ姿のみだったが強面系の編集長や旧知のライター、映画評論家の方々はばっちりと存在感を発揮していた。ちなみに、エンドクレジットには全員の名前を入れてくださったようで、なんだか恐縮してしまう。なによりも、今回、間違いなく新境地を開拓したと思われる山崎の演技を間近で見学できたことがありがたかった。
原作小説については、出版されてすぐに読んだと言う行定監督。「青春ラブストーリーですが、又吉さんの私小説的なニュアンスがある。ああ、俺、この感情を知っているから、映画にできるなと思いました。でも“又吉直樹”の名前がなければ、こんな企画は絶対に通らない。『火花』の次の作品で、研ぎ澄まされている部分がありましたが、そのぶん地味で淡々としていて、ほとんどが永田と沙希の話ですから」。
行定監督は、主人公の永田にシンパシーを感じたようだ。「クリエイター側からすれば、一番心を開いている人に八つ当たりしたり、相手のやることなすことすべてが苛立ちにつながったりすることがあるんです。普通の人から見れば、どうしようもない男に見えると思いますが、ある意味、そんな男を支えようとする、どうしようもない女の話でもあるのかなと。若いのに自分の才能を信じられない、でも、負けを認めたくない男と、支えきれなくなって壊れていく女の話ですね」。