無精ヒゲの山崎賢人、目つきも色っぽい…!映画『劇場』エキストラ体験レポート
「山崎賢人は色気があるし、これまで見たことのない顔をしている」
今回、初めて組んだ主演の山崎について行定監督は「すごいピュアな男です。俳優としてもそうですし。素直で1つ1つの役にちゃんと向き合っています」と印象を述べた。ヒロインを務めた松岡茉優については「ある種、天才肌なところがある」と述べ「松岡は、最初のテイクから思いも寄らない演技をしてくる、山崎はテイクを重ねれば重ねるほど良くなっていく。そういう意味では、2人の演技でどこをOKラインに持っていくのかが非常に困難でした。そこは真逆でしたが、2人とも感性がすばらしかった」と絶賛する。
特に、山崎については「色気があるし、これまで見たことのない顔をしている」と言うが、現場に佇む山崎を見て大いに納得した。「彼は毎回、いろんなアプローチをしているけど、すごく目が澄んでいるんです。そこを濁らせるところから始めました。とても真面目だから、もともと生えにくい髭もT字カミソリで何度も剃って濃くしてもらいました。痩せこけて、髪の毛もくしゃくしゃです。ああいうやぼったい彼は、いままでなかったと思います」。
常に原作へのリスペクトを忘れない行定監督だが、『ピンクとグレー』(16)でも組んだ蓬莱竜太の脚本は、原作に寄り添いつつも、映画ならではの味わい深い余韻を与えてくれる。行定監督は「僕は原作の台詞や設定を変えたり、大きななにかを加えたりはしたくない人です。だから今回も原作どおり、劇場は下北沢の小劇場にこだわり、井之頭公園で撮ることからスタートしました。下北沢の道の真ん中で人を止めて撮影もしています。だって、下北沢と書いてあるし、タイトルが『劇場』ですから」。
そう、いわば本作の顔とも言える“劇場”は、なんと完全セットで再現するというこだわりぶりだ。「OFF・OFFシアター、駅前劇場、小劇場楽園と、この3つを完全セットで再現しました。きっと映画を観たら、駅前で撮ったんだろうなと自然に思ってもらえると思います。また、いまは名前が変わっているけど、タイニイアリスも出てきます。演劇を題材に使った映画だから、嘘っぽくなると作品への冒涜に当たると思ったので、実際に小劇場に立っている人たちにも見てもらって、そこから撮影をスタートしています」。
また、行定監督は、以前から純文学を映画化することに情熱を注いできた。「昨今の映画でいえば、もっとわかりやすいもののほうが当たっていますが、僕自身はもう少し曖昧なところを表現していきたい。又吉さん自身も純文学をいまの世の中にちゃんと残したいと思っていると思いますし。『劇場』は、エンターテインメントではなく、明らかに純文学です。2人が出会い、寄り添っていって、その経過が描かれているだけですから。ただ、岡崎京子原作の映画『リバーズ・エッジ』もそうでしたが、原作にあまり抵抗はしないけど、同じように再現しようと思ったことはあまりなくて、映画的な解釈はしたいなと思いました。今回も又吉さんにそこを理解していただき、GOが出たので、原作には書かれていないシーンをプラスしました。ある種プレッシャーはありましたが、いまはぜひ完成した映画を観ていただきたいです」。
※山崎賢人の「崎」は立つ崎が正式表記
取材・文/山崎 伸子