『そして父になる』など200作品の上映権料を免除!米配給会社の劇場再オープン支援策

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『そして父になる』など200作品の上映権料を免除!米配給会社の劇場再オープン支援策

米インディペンデント系配給会社IFCフィルムズは、「インディペンデント・シアター・リバイバル・プロジェクト」と題して、同社が保有する200本あまりの作品を、映画館が再オープンした際に無料で貸し出すことを発表。リストには是枝裕和監督の『そして父になる』(13)やケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16)などカンヌ国際映画祭で主要賞を受賞した作品や、アカデミー賞にノミネートされた数々の作品を含んでいる。

劇場再開を応援!『そして父になる』など映画祭を賑わせた作品たちの上映権料を免除
劇場再開を応援!『そして父になる』など映画祭を賑わせた作品たちの上映権料を免除写真:まつかわゆま

アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大予防策として3月半ばに外出禁止令が発出されて以来、映画館も休業中。トランプ米大統領の段階的経済復活策によって来週にはジョージア州の映画館が再開される。だが、多くの都市ではまだ再開の目処は立っておらず、米シネコン大手のAMCは破産宣告の危機に瀕しながらも、6月半ばには映画館を再度オープンできるのではないかという見通しを発表している。

この希望的観測のもと6月半ばに劇場を再オープンできるとしても、それまでのおよそ3ヶ月無収入のまま家賃や人件費などの固定費を払い続けなくてはならない。特に大手チェーンに属さないインディペンデント系劇場の困窮は深刻な問題となっている。なかにはバーチャル映画館としてVOD配信を行なっている映画館もある。昨年『パラサイト 半地下の家族』の米国配給を手がけた配給会社NEONは、5月1日からサンダンス映画祭で話題となったドキュメンタリー『Spaceship Earth』のVOD配信を、映画館のHPだけでなくカフェや図書館にも広げ、コミュニティに収入の機会を増やしたいとしている。

IFCの「インディペンデント・シアター・リバイバル・プロジェクト」は、5月29日以降に劇場を再オープンする際に、IFC配給作品およそ200作品の権利使用料を30日間免除する。

そのなかにはIFCがキュレーションした20のプログラムがあり、カンヌ映画祭コレクションには2016年のパルムドール受賞作『わたしはダニエル・ブレイク』、2013年のパルムドール『アデル、ブルーは熱い色』(アブデラティフ・ケシシュ監督)、2007年パルムドール『4ヶ月、3週と2日』(クリスティアン・ムンジウ監督)、2013年の審査委員特別賞『そして父になる』、2016年監督賞『パーソナル・ショッパー』(オリヴィエ・アサイヤス監督)などを含む。

2013年のパルムドール、『アデル、ブルーは熱い色』
2013年のパルムドール、『アデル、ブルーは熱い色』写真:SPLASH/アフロ

また、IFCが設立以来20年間上映してきたインディペンデント映画の名作集には、『6才のボクが、大人になるまで。』(14、リチャード・リンクレイター監督)、『天国の口、終りの楽園。』(01、アルフォンソ・キュアロン監督)、『フランシス・ハ』(12、ノア・バームバック監督)、『君とボクの虹色の世界』(05、ミランダ・ジュライ監督)『さざなみ』(15、アンドリュー・ヘイ監督)など、日本でも上映され人気の高い作品がラインナップされている。

IFCは、「全米のインディペンデント系映画館は、我々にとって不可欠なパートナーであり、彼らのサポートがなければ今日のIFCフィルムズはありませんでした。新作が通常通り上映されるようになるまで、過去作を提供することで劇場再開の最初の一歩を手助けしたいと考えました」と声明を出している。支援米映画業界のこうした相互支援策は今後も増えていくとみられる。

文/平井伊都子

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