第69回ゴールデングローブ賞授賞式迫る!例年にない混戦模様で受賞予測は不可能?
現地1月15日に開催される第69回ゴールデングローブ賞(以下、GG賞)は、映画界最大の式典アカデミー賞を予測するうえで最も重要な賞だが、日本ではリアルタイムでオンエアされるアカデミー賞に比べて、かなり認知度が低い。しかし、今年はYOSHIKIが同賞のテーマ曲を手がけるという素晴らしいニュースが届いており、日本のメディアや映画ファン以外の関心も大きいようだ。
さて、アカデミー賞の本命と言われるドラマ部門の作品賞を見てみると、昨年の今頃は『英国王のスピーチ』(11)が急ピッチで追い上げてはいたものの、『ソーシャル・ネットワーク』(11)の一人勝ち状態だった。また、一昨年はドラマ部門の作品賞で『アバター』(10)と『ハート・ロッカー』(10)の一騎打ちが展開されるなど、予測の絞り込みが可能だった。ところが、今年は数々の映画賞が発表され始めているにも関わらず、一部の部門を除いて、予測がかなり散っており、未だ確実視されている受賞者、受賞作品が少ない状況だ。
ということは例年以上に、その瞬間までワクワク・ドキドキしながら結果を待つというお楽しみが待っているわけだが、そんな中で映画サイトnextmovie.comとindiewire.com、hitfix.comなどのメディアが予測している主要各部門の受賞予測をまとめてみた。
まずはドラマ部門の作品賞。大方の予想は『ファミリー・ツリー』と『戦火の馬』に割れている。ハリウッド外国人記者クラブ(以下、HFPA)が、比較的大作を好む傾向にあることや、アカデミー賞に比べると興行成績も重要視される傾向にあることも手伝って、一時期はスティーブン・スピルバーグ監督作『戦火の馬』に軍配が上がっていたが、予算をかけた話題作の割には興行成績が振るわない結果に終わりそう。一方の『ファミリー・ツリー』はじわじわと興行成績を伸ばしており、やはりHFPAが大好きなジョージ主演の同作に有利な展開になりつつあるようだ。しかし、予想外の大ヒットを飛ばした『ヘルプ 心がつなぐストーリー 』も手堅く、全く予測不能な展開となっている。
続いて同主演男優賞だが、こちらも混戦模様。今年は例年と違って、いわゆる大ベテラン俳優がノミネートされておらず、最年長で50歳のジョージ・クルーニー『ファミリー・ツリー』を筆頭に、ブラッド・ピット『マネーボール』、レオナルド・ディカプリオ『J・エドガー』というタブロイド誌を賑わしている超セレブな大スターが勢ぞろいすることでも大いに注目を集めている。こちらの予測は、私生活でも親友のジョージとブラッドに票が集まっているが、ジョージは『スーパー・チューズデー 正義を売った日』で監督賞にもノミネートされていることから、ジャンルが違えども票割れの可能性が指摘されており、何とも言いがたい状況だ。レオの受賞の可能性が急降下している一方で、ジョージ監督作のライアン・ゴズリング『スーパー・チューズデー 正義を売った日』、全裸で体当たりの演技を見せたマイケル・ファスベンダー『SHAME シェイム』のサプライズ受賞を予測するメディアもあり、一番の激戦区と言えそうだ。
一方、主演女優賞は、オーバー50のベテラン女優3人を差し置いて、ヴィオラ・デイヴィス『ヘルプ 心がつなぐストーリー 』が有力視されていたが、6日から全米公開されたばかりの作品で、英国のサッチャー元首相を演じた名優メリル・ストリープ『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』の存在が急上昇している。サッチャー家が特別上映会出席を拒否したことで物議を醸すなど、話題性も十分なうえに、メリルには人を圧倒する絶対的な存在感と演技力があり、今回も手怖い存在になりそうだ。また、HFPAの意表性を鑑みて、ティルダ・スウィントン『少年は残酷な弓を射る』と予測するメディアもある。
次にミュージカル・コメディー部門だが、こちらはドラマ部門とは違って、はっきりとした展開が予想されている。ほぼどのメディアも、作品賞は『アーティスト』、主演男優賞には同作のジャン・デュジャルダン、そしてジャンルを問わない監督賞にも、同作のミシェル・アザナヴィシウス監督の受賞は間違いないと考えており、既にアカデミー賞に話題が移っているようだ。
それに対して、はっきり展開が読めないのは主演女優賞で 、アカデミー女優のシャーリーズ・セロン『ヤング≒アダルト』と、ミシェル・ウィリアムズ『マリリン 7日間の恋』の一騎打ちが予想されているが、『マリリン』の興行成績が1000万ドルを突破する勢いを見せており、現在も国民的アイドルであるモンローを演じたミシェルが優勢になりつつあるようだ。また、密かにクリステン・ウィグ『Bridesmaids』の注目度も高まっており、こちらも結果が出るまで予測不能だ。
部門を問わない助演男優賞、助演女優賞は、毎年比較的各映画賞を席巻する傾向にあり、その結果がそのままGG賞、アカデミー賞に反映されることも多いが、現時点ではケネス・ブラナー『マリリン 7日間の恋』とクリストファー・プラマー『人生はビギナーズ』に票が割れている。しかし、最終的にはじわじわと評価を上げているクリストファーがトロフィーを手にするのではないかという見方が強まっている。
また、助演女優賞は『ヘルプ 心がつなぐストーリー 』のオクタヴィア・スペンサーとジェシカ・チャステインが有力候補だったが、ジェシカの評価が上がりつつあるものの、今のところオクタヴィアの圧倒的な演技への評価が高い。しかし、作品が同じであることから票割れが起こるサプライズがある可能性が指摘されていることと、ここに来てベレニス・ベジョ『アーティスト』の存在が再浮上しており、こちらも確実な予測は立てられていない。
なお、アニメーション部門は『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』と『ランゴ』で票が割れているが、面白い予測は外国語映画賞部門。他の各映画賞では、ベルリン映画祭の金熊賞をはじめ、同映画祭史上初の3冠を勝ち取ったイラン映画『別離』が圧倒的な強さを見せているにもかかわらず、HFPAが大好きなペドロ・アルモドバル監督作『私が、生きる肌』と、同じく女優としても人気を誇り、アメリカ映画ながら同ジャンルにノミネートされたことが大きなサプライズとなったアンジェリーナ・ジョリー初監督作『In the Land of Blood and Honey』のいずれかが選ばれると予測されているのは、GG賞ならではのユニークな結果だと見る向きもあるようだ。
アカデミー賞に大きな影響を及ぼす同授賞式まであとわずか。今年はどんなサプライズが待ち受けているのか楽しみだ。【NY在住/JUNKO】