大御所パーソナリティーが70歳で女装!? 強烈な印象を残す謎の隣人役の正体は?
『かもめ食堂』(06)、『めがね』(07)、『トイレット』(10)など、ゆったりとした空気感の作品を数多く生み出し、大人の女性から圧倒的な支持を得ている映画監督・荻上直子。舞台となる町の美しい風景や食欲を刺激する食卓など「見ているだけで癒される」「料理がしたくなる」という声が数多く聞かれる彼女の作品には、どこか寂しさを抱える主人公と共に“謎の人物”としか言いようのないの不思議キャラクターが活躍することでも知られる。
『バーバー吉野』(03)のケケおじさん、『恋は五・七・五!』(04)でいつもウクレレを抱えている女子高生・Pちゃん、『かもめ食堂』では食堂の中をにらむフィンランド人女性、『めがね』の浜辺の宿「ハマダ」の常連客・サクラ、そして『トイレット』に至っては、役名すらない謎の女性がストーリーに絶妙なアクセントを加えている。
5月12日(土)公開の荻上監督最新作『レンタネコ』にも、その謎の人物が登場するのだが、今回は寂しい人にネコをレンタルするレンタネコ業を営む主人公・サヨコの隣人。カラフルなスカーフをパーマヘアに、フリルでトリミングされたウエストエプロンを腰にそれぞれ巻き、ロングスカートに健康サンダル履きといった、古き良き昭和時代のおばちゃんスタイルで、庭先でふとん叩きや家事にいそしむサヨコの前に現れては「アンタの前世はね、セミだよ」といった微妙な一言を残していくその人物を演じているのは、日本を代表する音楽番組「ベストヒットUSA」のパーソナリティーや情報バラエティ番組「SmaSTATION!!」のナレーションで知られている小林克也なのだ。
映画撮影当時、御年70歳にして女装に挑戦していた小林だが、その年齢が信じられないほどの若々しさと昭和のおばちゃんルックが意外なほど似合っていることに驚かれる人も少なくないはず。また、女性用カツラ&スカート姿にマッチする裏声ではなく、あえて“イイ声”でおばちゃんを演じているのも荻上監督ならではのこだわりが感じられるキャラクター設定となっている。
登場するタイミングも多くはなく、しかも役名すらないが、強烈な印象を残す小林克也演じる謎の隣人。その妖しさは必見の価値あり。是非ともその姿をスクリーンで味わってもらいたい。【トライワークス】