第86回アカデミー賞ノミネーションはサプライズの嵐!
現地時間の16日に第86回アカデミー賞のノミネートが発表され、『アメリカン・ハッスル』『ゼロ・グラビティ』が10部門、『それでも夜は明ける』が9部門でノミネートを果たした。
毎年、サプライズノミネートされる人や作品がある一方で、まさかの落選組もいるが、例年以上に混戦状態だった今年はノミネート結果にも大きなサプライズがあったようだ。
サプライズノミネートと辛酸組を、ロサンゼルス・タイムズ紙、Usウィークリー誌、米ABCテレビ、米フォックスニュース、USAトゥデイなどの情報を基にまとめてみた。
まず総スカンを食らう憂き目にあったのは、リー・ダニエルズ監督作『大統領の執事の涙』だ。10作品の枠がある中で9作品しか選ばれずに1枠が残っていたが、作品賞にもノミネートされず、ゴールデングローブ賞には漏れたものの全米俳優組合賞ではノミネートされ、『カラー・パープル』(85)以来、実に28年ぶりのノミネートが確実視されていたオプラ・ウィンフリーが助演女優賞から漏れるという結果に。公開が早かったことにも一因があるという見方もあるようだが、最大の辛酸なめ組となった。
また、全米監督組合賞にもノミネートされ、監督賞ノミネートが確実視されていた『キャプテン・フリップス』のポール・グリーングラス監督に代わって、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のアレクサンダー・ペイン監督がノミネートされたことは独特な視点を持つオスカーではあり得ることだが、なにより確実視されていた主演男優賞からトム・ハンクスが外されたのも今回の大きなサプライズ。作品賞にはノミネートされたが、ほかのメインの部門では、新人のバーカッド・アブディが助演男優賞にノミネートされるにとどまった。
過去に2度オスカーを受賞しているトム・ハンクスは、『ウォルト・ディズニーの約束』で助演男優賞にノミネートされる可能性もあったが、票割れがあったのかこちらでも落選。メリル・ストリープが投票締め切りの1日前に、ディズニーの創始者ウォルト・ディズニーのことを「女性差別主義者で反ユダヤ主義者だった」と語ったことがどこまで会員に影響したのかは不明だが、同作が作品賞にもノミネートされなかったことや、ノミネートが確実視されていたエマ・トンプソンが主演女優賞から漏れ、今回は外れると予想されていたメリルがノミネートされたことを考えると、ディズニーが全般が会員から支持されなかったことをうかがわせる結果となった。
トム・ハンクスのほかに、主演男優賞から漏れたベテランのロバート・レッドフォード(『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』)は、英国アカデミー賞や全米俳優組合賞のノミネートからも外れていたものの、こちらの落選も大きなサプライズ。代わりに、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のレオナルド・ディカプリオ、そして後半戦で猛撃した『アメリカン・ハッスル』のクリスチャン・ベールがノミネートされたこともサプライズとなったようだ。
Fandango.comのアンケート調査でも、トム・ハンクスの落選が一番のサプライズで、次いでオプラ・ウィンフリー、エマ・トンプソン、そしてロバート・レッドフォードの落選と続いている。
助演男優賞からトム・ハンクスや、遺作となった『Enough Said(原題)』の故ジェイムズ・ガンドルフィーニを押し出してノミネートされた『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のジョナ・ヒルも今回の大きなサプライズだ。候補には上がっていたものの、難しいと言われていただけに本人も驚いたようだが、監督賞もマーティン・スコセッシ監督が、主演男優賞にもレオナルド・ディカプリオがノミネートされており、後半戦で一気に勢力を伸ばした同作の強さがうかがえる。
また、助演女優賞では、オプラの代わりに『ブルージャスミン』でケイト・ブランシェットの妹を演じたサリー・ホーキンズが初めてのノミネートを果たしたほか、ジュリア・ロバーツのノミネートもサプライズと言われているが、いずれもまったくの想定外のノミネートはなかったようだ。
そして今回、一番サプライズがあったのはなんといっても作品賞だろう。監督賞の枠は少ないが、10席中1席余っているにもかかわらず、秀作と称えられたコーエン兄弟作『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』や、ウディ・アレン監督作『ブルージャスミン』が作品賞にもノミネートされなかった一方で、アカデミー会員の趣向からは遠そうな近未来を描いた『her 世界でひとつの彼女』がノミネートされたこともサプライズとなった。
相変わらず『ホビット 竜に奪われた王国』『アイアンマン3』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』などの超大作は視覚効果賞のみのノミネートだが、ジョニー・デップがラジー賞の主演男優賞にノミネートされた『ローン・レンジャー』が同カテゴリーにノミネートされたことは想定外だったようだ。
日本では、長編アニメ部門に宮崎駿監督作『風立ちぬ』が、短編アニメ部門には森田修平監督作『九十九(つくも)』がノミネートされた今年のアカデミー賞は、現地時間の3月2日(日)にドルビー・シアターで開催される。【NY在住/JUNKO】