上野樹里が語る結婚の意味「自分よりも相手が大事になった」
上野樹里が、映画『お父さんと伊藤さん』(10月8日公開)で、『陽だまりの彼女』以来3年ぶりの映画主演を果たした。今年5月に30歳を迎えるや、結婚という人生の新たなステージに踏み出した彼女。「ひとりだったのが、ふたりになった生活を何より楽しみたい」とこれからの楽しみを語るが、そんな「家族との日常」をリアルかつ、ユーモアをもって描いた本作は、彼女の30代のスタートを彩るのにぴったりの作品となった。本作への思い。そして、結婚してからの変化について聞いた。
中澤日菜子による同名小説を、タナダユキ監督が映画化した本作。バツイチの“伊藤さん”(リリー・フランキー)と2DKのアパートで同棲中の34歳の彩のもとに、彩の父(藤竜也)が突然転がり込んできたことから始まる、奇妙な共同生活を描く物語だ。上野は、「30歳に差し掛かった自分だからこそ、彩を自然に演じられると思った」とオファー時を述懐。
今の自分を通して、現代を生きる等身大の女性を表現できると思ったからこそ、本作に強く惹きつけられた。「お金もあまりないから、働かなきゃいけない。行き場をなくして孤立した父親のことを考えたり、今後の自分やお金のことを常に意識しているところなど、すごく現実的なお話だなと思って。夢物語ではなく、今の女性をリアリティをもって描いている作品だと思ったので、やってみたいなと思いました」。
家族と暮らすことの面白みを描いた本作。上野も結婚して新たな家族を得たが、30代になっての変化を聞いてみると、「ひとりだったのが、ふたりになった生活を何より楽しみたい」と率直に胸の内を明かす。「今までの日常の自分からすると、非日常なことがいっぱい起きる。今までは100%自分のために時間を使っていたけれど、今は撮影が終わればスーパーに寄って、帰ったらすぐに着替えてご飯を作る。そうやって、生活のことを考える割合が増えたかなと思います」と充実の思いを語り、「それが仕事にも何か味となって出てくるんだろうな」と自身の変化を大いに楽しんでいる。
自分の時間がなくなるからと、結婚に尻込みする人も多いが、上野は「自分の時間はもちろん大事。でも自分のことよりも、相手のことが大事になってきた」と結婚の意味を語る。「みんなそうなんだと思うんです。子供ができた人だって、きっと自分の思うように物事が行かなかったり、そうしている内に二人目とかできて、予想外のことばかり起きる(笑)。それでもみんなそれが習慣になって、最初の自分からは考えられないことができるようになっちゃったり」。
さらに「今までの私から言えば、すべてが非日常で毎日が特別。小さなことがいろいろとあって、それでも『めんどくさい』とは思いません。『こんなことが起こるんだ』って一つ一つが楽しくて!そういったことがこの映画にもギュッと詰まっている」と映画と自身の生活を重ね合わせてにっこり。「20代の頃は、恋愛とか夢、冒険というワードがテーマだった。でも30代になってからは“現実”とか“ちょっと先の未来”とかがテーマ。自分が何が好きかというのが明確になって、好きなものを掘り下げていく段階に入っていっている気がします」。
自身が自然体でいられる伴侶と、豊かな日常を得た上野。女優としてそれがどんな味になっていくのか。見る側のこちらもそれが楽しみだが、その思いを伝えると「ありがとうございます!」とドキリとするほど輝かしい笑顔を見せた。「これからもどんなことを要求されるかわかりませんが、それを楽しんでいきたいです」。ドンと器を広げた彼女から、ますます目が離せない。【取材・文/成田おり枝】