高評価続出!批評家が選ぶ“フレッシュ”なドキュメンタリー映画を一挙に紹介 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2020/7/25 15:30

高評価続出!批評家が選ぶ“フレッシュ”なドキュメンタリー映画を一挙に紹介

5作品が96%フレッシュで並んだため12作品をリストアップすることになったことからもわかるように、ほかのあらゆるジャンルと比較しても高評価作品の多さが目を引く。全体的にレビュー数がそれほど多くないというのも高評価となった理由として考えられるが、それでも各作品に付けられたレビューは100以上。やはりジャンルの特性として「良い」か「悪い」の判断が明確に付けられやすいものであるのだろう。しかも、そのラインナップを見ると、100%フレッシュを獲得した『マン・オン・ワイヤー』をはじめ、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞受賞作が4本、同ノミネートに留まった作品が3本も含まれている。

ワールド・トレード・センターの2つのビルの間を綱渡りで渡った大道芸人フィリップ・プティの偉業を追った『マン・オン・ワイヤー』は100%フレッシュ!
ワールド・トレード・センターの2つのビルの間を綱渡りで渡った大道芸人フィリップ・プティの偉業を追った『マン・オン・ワイヤー』は100%フレッシュ!写真:SPLASH/アフロ

その『マン・オン・ワイヤー』は第81回アカデミー賞で同賞を受賞したほか、その年の映画賞をほぼ総なめにする熱烈な賛辞を獲得した、まさに21世紀を代表するドキュメンタリー映画の傑作の一つ。70年代に大道芸人のフィリップ・プティが、ニーヨークにかつて存在したワールド・トレード・センターの2つの建物の間を綱渡りで渡る前代未聞の挑戦の軌跡をたどり、その偉業の背景にあった事柄が実に丁寧に汲み取られていく。人物・出来事、そして芸術と社会。そこに作品が作られた時点ですでに失われていたワールド・トレード・センターへの郷愁を潜ませるなど、一つのテーマをあらゆる側面から見ることができる作風は、ドキュメンタリー作品としても非常に意義深い。この挑戦を劇映画化したロバート・ゼメキス監督の『ザ・ウォーク』(15)と見比べてみるのもおもしろいだろう。

【写真を見る】知っておくべき歴史の真実から、奇想天外な芸術家の素顔まで…。もっとも高い評価を獲得したドキュメンタリー映画は?
【写真を見る】知っておくべき歴史の真実から、奇想天外な芸術家の素顔まで…。もっとも高い評価を獲得したドキュメンタリー映画は?『私はあなたのニグロではない』公式サイト:https://www.magichour.co.jp/iamnotyournegro/

それに次ぐ99%フレッシュを獲得した『私はあなたのニグロではない』は、第89回アカデミー賞ノミネート作品。ジェームズ・ボールドウィンの未完成原稿をもとに、ラウル・ベック監督がアメリカの人種差別の歴史を公民権運動の指導者たちの回想とともにつづった作品だ。

アメリカをはじめ世界各地で人種差別の撤廃を求める「Black Lives Matter」が広がりをみせているいまだからこそ、本作を通してその根深い差別の歴史を学んでみてはいかがだろうか。また、同じ年の長編ドキュメンタリー賞には、おなじく人種差別の歴史をたどったエヴァ・デュヴァルネ監督の『13th -憲法修正第13条-』(16)が候補入りしていた。両作をあわせて観ると、いま世界で起きている出来事をより深く知ることができるはずだ。

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アカデミー賞のお墨付きを得ている作品にも負けない高評価を獲得した2作品をピックアップしたい。98%フレッシュの『ブラックフィッシュ』は、2010年にアメリカ国内の水族館で起きた、ショーの最中にシャチがトレーナーを殺害した事故に端を発し、海洋哺乳類と人間の関係について問題提起した衝撃作。また同じく98%フレッシュの『猫が教えてくれたこと』は、トルコの首都イスタンブールで生きる野良猫たちの視点から、人間とネコの交流とトルコの文化を知ることができる作品。文字通り“ネコ目線”のユニークなカメラワークも必見だ。人間以外の動物を被写体に選んだ両作だが、その描き方の差は実に興味深いものがある。

歴史をあらゆる視点から見つめ直し、映像として後世に伝えることがドキュメンタリー映画の魅力だ
歴史をあらゆる視点から見つめ直し、映像として後世に伝えることがドキュメンタリー映画の魅力だ写真:SPLASH/アフロ

ほかにも映画ファン垂涎の『ヒッチコック/トリュフォー』や『ホドロフスキーのDUNE』といった注目作が数多くランクインしているが、そのなかでも96%フレッシュを獲得したジョシュア・オッペンハイマー監督の『ルック・オブ・サイレンス』を紹介しておきたい。

1965年にインドネシアで起きた大虐殺事件を題材に、その虐殺の関係者に当時の行動を再現させながら真実を浮き彫りにさせた前作『アクト・オブ・キリング』(12)につづき、本作では被害者側にスポットを当てていく。この2作を通してひとつの出来事を多面的な視点から振り返ることで、正義と悪は常に表裏一体の関係であり、どちらも絶対的なものではないのだということを改めて感じることだろう。

負の歴史であってもしっかりと見つめ直して省みること、一元的な視点に囚われることなく全体像を見極め、そして考えること。ドキュメンタリー映画は、いまの世界に必要な多様な価値観を養うきっかけになるものばかりではないだろうか。

文/久保田 和馬

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