WOWOWが映画愛を詰め込んだ、唯一無二の“映画館”「W座」の10年とこれから
「“配信時代”は、WOWOWにとってピンチではない」
「W座」が放送開始してからこの10年の間で映画を取り巻く環境は大きく変化し、その最たるものは、WOWOWのような有料放送にとって大きなライバルとなりかねない配信サービスの台頭だ。「配信サービスはとても便利だと感じていますし、実際に多くの方々が体験されている。だからこそ、これはWOWOWにとってピンチではなくチャンスではないかと思っています」と、宮田は前向きな姿勢を明らかにする。
「無機質なインターフェイスから送られるリコメンドには温もりがなく、自分はなにが好きでなにを観たいのか、なかなか気付けないのではないかと思ってしまうものです。でもWOWOWの番組編成にはきちんとしたメッセージがある。このラインナップに託したメッセージを視聴者に伝え、体感してもらえることができれば、僕たちは放送業者としてひとつ上の段階にいけると考えています」。
「映画の見方は人それぞれ、正解も間違いもない」
その一環として「W座」では、実際に視聴者と触れ合うイベントが行われてきた。
2018年秋には第31回東京国際映画祭とコラボレーションを果たし、日本初お披露目となる作品の上映を兼ねた公開収録を敢行。また昨年も京都の出町座で公開収録を行った後、小山薫堂が主人を務める「下鴨茶寮」で懇親会が開催された。
「自分の好きなものを、好きな人たちと話しながら食事をする、というのは良いコミュニケーションだなと思いました。次回の開催を希望される声もたくさんあがっています」と、今後も同様の企画を開催する意欲をのぞかせる。
「よく小山さんたちが収録の後に『こんな会話でいいのかな?映画のこと全然話してないけれど』と仰るのですが、僕はいつも『それでいいと思います』と返すんです。映画の見方って人それぞれで、正解も間違いもない。自分のなかでどう昇華させていくかだと思います。お2人に自分ごととして話していただくことで、視聴者にも自分ごととして受け止めてもらう。そうすることで、ただ映画を観るだけではない新たな気付きが生まれていくのだと思っています」。
さらに宮田は、10周年イヤーの野望として「常設の、リアルな映画館を作りたい」と語る。「WOWOWの放送とうまく兼ね合いをとりながら上映作品を選び、新しい“映画とWOWOW”を提供していくリアルな“映画館”を持ちたいんです。まあ、あくまで僕の一個人としての夢ですけどね(笑)」。
映画愛にあふれた男たちと、「W座」の10年にわたる挑戦は、次の10年に向かって走りだしたばかりだ。
取材・文/久保田 和馬