土屋アンナにスカウトされた!撮影当時9歳の“原石”…『クシナ』主演の美少女が気になる
女性だけが暮らす男子禁制の山奥の集落を舞台に、母と娘の物語を描く『クシナ』(公開中)。独特の感性による映像美が観る者を惹きつけ、北米最大の日本映画祭であるニューヨークのJAPAN CUTSにも招待された。そんな本作で主演を務めたのが、撮影当時9歳だったモデルで女優の郁美カデールだ。ありのままのみずみずしい演技が光る彼女にフォーカスしたい。
深い山奥に人知れず存在する、女性だけの男子禁制の村。唯一山を下りることが許されている村長の鬼熊(オニクマ)は、山で収穫した大麻を売って必要な物資を買い、28歳の娘、鹿宮(カグウ)と孫娘で14歳の奇稲(クシナ)ら村民たちを守っていた。そんなある日、閉鎖的なコミュニティを探していた人類学者の風野蒼子とその後輩、原田恵太が迷い込んでくる。一時的に滞在を許可する鬼熊だったが、2人との交流が、鹿宮や奇稲たちに変化をもたらし始める。
鬼熊役で『あぶない刑事』(87)や『ブラック・レイン』(89)などの小野みゆきが登場するほか、鹿宮を『タカノの匂い』(13)、『VIDEOPHOBIA』(19)といったインデペンデント系作品で活躍する廣田朋菜が、人類学者の蒼子を多くのCMや舞台、映画に出演してきた稲本弥生が演じた。村の女性たちに影響をおよぼす原田役には、『予告犯』(15)、『サバイバルファミリー』(17)の小沼傑がキャスティングされている。
個性あふれる大人のキャスト陣のなかでも、無垢な少女の奇稲役を演じた郁美カデールの存在感は大きい。2012年に6歳でモデルデビューした彼女は、9歳の時に本作でいきなり主演を務め、女優デビューを果たした。実は奇稲役のキャスティングは難航しており、撮影開始の数日前になっても決まっていなかったという。しかし、本作が長編デビュー作である速水萌巴監督が信頼を置くメイクアップアーティストがカデールを提案し、彼女の写真を見た監督が「この子しかいない!」と即決したそうだ。
演技初挑戦のカデールは、シナリオや台本はあるものの、“素のまま”で演じるように指示されたという。森で遊ぶ様子や初めて出会う外界から来た蒼子への新鮮な反応など、自然体な姿が実際にこの村で暮らしてきたようなリアリティを醸している。それだけに、蒼子たちを追い出そうとする鬼熊や鹿宮に対し、疑問を投げかけ、必死に止めようとする表情が胸に刺さる。
カデールは現在、奇稲と同じ14歳になった。劇中ではあどけない雰囲気が印象的だったが、5年が経ち、ずいぶんと大人の女性に近づいている。2019年には、モデルで女優の土屋アンナに直接スカウトされ、以前所属していた事務所に入るきっかけになったという。
今後の活躍も楽しみな郁美カデール。彼女の純粋無垢な存在感と共に、鬼熊と鹿宮、そして奇稲が織りなす母娘三代の、一筋縄ではいかない複雑な関係性にも触れてみてほしい。
文/トライワークス