常識やスタイルにこだわらない!“おもしろい”を追求し続けた「マッドマックス」3部作
『マックマックス』の国際的な成功でハリウッドから監督依頼が舞い込むなか、ミラーが長編2作目に選んだのが続編『マックマックス2』(81)だ。今作では、愛車インターセプターで放浪していたマックスが、ならず者集団からコミューンの人々を守る姿が描かれる。
まず度肝を抜かれるのがその世界観。前作は荒んでいたが、人々は社会生活を営んでいた。ところが今作は、最終戦争により社会どころか文明まで崩壊した荒野が舞台。通常、続編は前作の基本設定を踏襲するのがお約束だが、ミラーは主人公マックス以外の要素(愛車さえも!)をばっさり削除。そんな攻めのリセットが、結果マックス伝説を加速させた。
今作でマックスが対峙するのは食糧、ガソリン、女を求め略奪や殺戮を繰り返す凶悪集団。何でもありな設定が、理想的な弱肉強食ワールドを生みだした。前作の約10倍もの予算をかけ、バイクやカスタムカー、トラックなど多彩な車輌を揃え、ジャイロコプターによるスカイアクションも投入しスケールアップ。激突、踏みつぶし、吹っ飛ばしなどカーバトルのバリエーションも増やしている。セリフは極端に少なく、前作以上に映画言語に特化した展開はまるでサイレント映画(壮大な音楽と爆音のような走行音は不可欠なのでミュージカルと呼ぶべきか)。救世主マックスを演じたメル・ギブソンの鬼神のような演技を含め、SFアクションの頂点を極める作品に仕上がった。
続く『マッドマックス/サンダードーム』(85)は、前作からさらに時を経て、荒野の中に町が生まれはじめた時代の物語。ラクダの荷車(!)に車を乗せて砂漠を旅するマックスが、荒くれ者が集うバータータウンと、子どもだけが暮らす集落を股にかけて活躍する。
カーチェイス、スカイアクションとシリーズの魅力を踏襲しつつ、今作は走行系の見せ場より個性派キャラが織りなすドラマ重視へとシフト。コミカルな見せ場も増え、ある意味で前作以上のチェンジが図られた。実は本作の準備中、ミラーは自主映画時代からの親友で、二人三脚でシリーズを築いてきた製作者バイロン・ケネディを事故で失っている。死と腐臭に満ちたバータータウンから、生命力あふれる子どもたちの集落へという展開に、そんなミラーの思いがにじんで見える。バイオレンスは抑え気味だが、マントにメッシュを入れたロン毛というマックスのルック、車VS鉄道という新基軸を含め今作もやはり攻めを感じる作品だ。
常識やスタイルにこだわらず、面白さを追求し続けた『マッドマックス』シリーズ。究極のカーアクションで観る者の度肝を抜いた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)は、そんな初期3部作があってこそ成し遂げられた金字塔だとあらためて感じるはずだ。
文/神武団四郎
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