これこそが『ロード・オブ・ザ・リング』の完成形!“エクステンデッド版”より合計120分(!)超えの未公開シーンを解説

コラム

これこそが『ロード・オブ・ザ・リング』の完成形!“エクステンデッド版”より合計120分(!)超えの未公開シーンを解説

『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』

サルマンとの戦いには勝利した。しかし、サウロンの脅威が去ったわけではなく、今度はゴンドールの首都ミナス・ティリスやモルドールを舞台に、人間の世界、そして中つ国全体をかけた最終決戦が繰り広げられる。一方、旅を続けるフロドたちにも様々な危険が迫り、指輪の魔力によって徐々に彼の心は蝕まれていく。

指輪に執着するゴラムに道案内をさせるフロドとサム(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)
指輪に執着するゴラムに道案内をさせるフロドとサム(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)THE LORD OF THE RINGS, THE RETURN OF THE KING, and the names of the characters, events, items and places therein are trademarks of The Saul Zaentz Company d/b/a Tolkien Enterprises under license to New Line Productions, Inc. The Lord of the Rings: The Return of the King [c] 2003, Package Design [c] 2010 New Line Productions, Inc. All rights reserved.

サルマンの最期
劇場公開された第三部では、サルマンとグリマは登場しないが、エクステンデッド版では二人の最期が描かれる。ガンダルフやアラゴルン、セオデンたちがアイゼンガルドを訪れ、メリーたちと合流したあと、オルサンクの塔に立てこもるサルマンへ降伏を勧告する。しかし、サルマンはこれを拒否し、ガンダルフを火で攻撃するが、彼には通用せず杖を破壊されてしまう。そして、足蹴にされたことに激昂したグリマにナイフで背中を刺され、サルマンは塔のてっぺんから落下し、水車の杭に体を貫かれ絶命。グリマもレゴラスの弓に討たれて死亡する。その際、サルマンの懐から、パランティアという遠方を見ることができる暗い水晶がこぼれ落ちている。
原作でのサルマンとグリマの最期はこれとは異なっている。指輪戦争の終結後に、ホビット庄を訪れ、ごろつきどもを使って支配下に置くサルマン。しかし、帰郷してきたフロドたちとの活躍でそのたくらみも阻止され、最後はエクステンデッド版と同じくグリマの背信によって命を落とし、グリマはホビットの射手によって討たれている。

ゴンドールの首都、ミナス・ティリスへ
ピピンがパランティアを覗き、サウロンのねらいがゴンドールであることを知ったガンダルフ。アラゴルンたちを残し、自身はピピンを連れてミナス・ティリスへと向かう。ミナス・ティリスに到着したあとの場面では、ガンダルフがピピンに、ゴンドールは長きにわたって王が不在で代わりに執政が統治を行っていること、国の象徴である“白の木”も枯れたままで民はいつか王が戻ってきてかつての繁栄を取り戻すことを願っていることを説明するシーンが追加されている。

また、オスギリアスから敗走してきたファラミアとピピンの交流も描かれる。ピピンの着ている軍服が自身の子どものころのものであること、幼少期のファラミアが勉強よりも冒険譚に夢中だったこと、父が自分より兄を大事にしていることを寂しく思っていることも語られている

死者の道を進むアラゴルンたち
ミナス・ティリスからの救援を求める烽火を受け、出兵を決意するセオデン。アラゴルンたちも彼とともに兵が集まる野営地を目指す。期待していた数の兵が集まらず、皆に不安が広がるなか、野営地をエルロンドが訪れ、アラゴルンに折れたナルシルの剣を鍛え直したアンドゥリルを渡し、死者の道を通り、死者の軍勢を招集するように促す。
死者の道でも追加シーンを確認することができる。意外にも、臆病なギムリが必死にレゴラスの名前を呼び、霊体のようなものを息で吹き消そうとし、地面に散らばる髑髏を踏んで顔を歪めるといったかわいい一面が見られる。

死者の軍勢を味方にすることに成功したアラゴルンたち。彼らが、モルドールの同盟軍でゴンドールへ向かう海賊船を迎え討つシーンも登場する。アラゴルンがレゴラスに、警告の矢を放つように指示するが、ギムリのちょっかいでねらいがずれ、海賊を一人射抜いてしまう。ちなみに、この射抜かれた海賊は、カメオ出演していたピーター・ジャクソンだ。

デネソールの乱心…
敵の猛攻で門が破られ、ミナス・ティリスの城内へ攻め込まれるなか、ファラミアが死んだと絶望したデネソールは、息子とともに焼身自殺を図ろうとする。これを阻止するため、ピピンがガンダルフを呼びに行き、デネソールがいる霊廟へ向かう。エクステンデッド版では、ここの経緯が少し異なっている。上層階へ急ぐガンダルフたちは、モルドール軍を率いるアングマールの魔王に遭遇。杖を破壊され、絶体絶命のピンチを迎えるが、そこでローハン軍の角笛が鳴り響き、魔王がそちらへ向かうという流れになっている。途中からガンダルフが杖を持っていないのはこのためである。

オリファントの群れがローハン軍をなぎ払う(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)
オリファントの群れがローハン軍をなぎ払う(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)THE LORD OF THE RINGS, THE RETURN OF THE KING, and the names of the characters, events, items and places therein are trademarks of The Saul Zaentz Company d/b/a Tolkien Enterprises under license to New Line Productions, Inc. The Lord of the Rings: The Return of the King [c] 2003, Package Design [c] 2010 New Line Productions, Inc. All rights reserved.

アラゴルンの癒しの力
ローハンや、アラゴルンたちが引き連れて来た死者の軍勢の救援もあり、モルドール軍を打ち破り、ミナス・ティリスを守ることに成功する。しかし、セオデンをはじめ多くの兵が敵に討たれ、魔王を倒したエオウィンも“黒の息”を受け昏倒してしまう。エクステンデッド版では、意識を失った彼女がアラゴルンの治療を受ける様子が描かれている。優しく介抱するアラゴルンの姿や心に響くロマンティックなメロディもあり、とても美しいシーンになっている。意識を取り戻し回復したエオウィンが、ファラミアと見つめ合うシーンも登場し、のちに2人が結婚する伏線となっている。劇場版ではこの場面がなかったので、アラゴルンの戴冠シーンで2人が仲睦まじげに寄り添うのを疑問に感じた人もいるかもしれない。

イシルドゥアの子孫でしだいに人間の王として覚醒していくアラゴルン(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)
イシルドゥアの子孫でしだいに人間の王として覚醒していくアラゴルン(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)THE LORD OF THE RINGS, THE RETURN OF THE KING, and the names of the characters, events, items and places therein are trademarks of The Saul Zaentz Company d/b/a Tolkien Enterprises under license to New Line Productions, Inc. The Lord of the Rings: The Return of the King [c] 2003, Package Design [c] 2010 New Line Productions, Inc. All rights reserved.

フロドのため、黒門での最終決戦へ
劇的な勝利もつかの間、依然モルドール軍の力は強大で、指輪を持つフロドたちの動向も気がかりだった。フロドの任務をサポートするため、ガンダルフたちは集められるだけのゴンドールとローハンの兵とともに、モルドールとの最終決戦に挑むことにする。この場面では、アラゴルンがパランティアを使い、サウロンにアンドゥリルを見せることで、彼を挑発し陽動に乗せようとする姿を確認できる。
モルドールの入り口にあたる黒門の前に軍を敷いた一行。そして、門が開き、“サウロンの口”と呼ばれる臣下が現れ、フロドが着ていたミスリルの鎖かたびらを掲げ、彼が拷問され死んだという嘘を告げる。メリーやピピンが動揺し、ガンダルフも目に涙を浮かべるが、「信じないぞ!」とアラゴルンがこれを一蹴し、サウロンの口の首をはね、戦いが開始されるという流れになっている。

滅びの山の火口で指輪を手に立ち尽くすフロド(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)
滅びの山の火口で指輪を手に立ち尽くすフロド(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』)THE LORD OF THE RINGS, THE RETURN OF THE KING, and the names of the characters, events, items and places therein are trademarks of The Saul Zaentz Company d/b/a Tolkien Enterprises under license to New Line Productions, Inc. The Lord of the Rings: The Return of the King [c] 2003, Package Design [c] 2010 New Line Productions, Inc. All rights reserved.

原作愛が強いジャクソン監督がエクステンデッド版で追加したシーンは、合計約120分(!)以上になり、この記事で紹介したものはその一部でしかない。本作こそが映画「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の“完成形”と言っても過言ではないので、まだ観ていない人はぜひチェックしてみてほしい。

文/平尾嘉浩(トライワークス)

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