過去の受賞作品から見る「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」歩み…次なる出身監督の注目作は?
『浅田家!』中野量太にも早くから注目
宮沢りえが余命わずかの母親を演じた『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)が大きな注目を集め、二宮和也扮するカメラマンの青年が、家族写真を撮り続けることに向き合う『浅田家!』(10月2日公開)も控える中野量太監督もこの映画祭の出身。自主短編映画を撮ってきた中野監督が初めて手掛けた長編『チチを撮りに』(12)は、母の頼みで幼いころに家を出て行った父を訪ねる姉妹が、思わぬ修羅場に巻き込まれていく人間ドラマだ。
日常の中に潜む人生のドラマが、ユーモアと哀愁を交えてあぶりだされており、2012年の審査で「脚本、構成、リズム、カメラワーク、ペース、どこを切り取っても成熟された、初監督作品とは思えない作品だった。本作にはユーモアがあり、ペーソスがあり、極めて感情豊かなものがあり、中野監督は自信を持って作り上げていた」と高評価を獲得。映画祭始まって以来の快挙と言える、日本人監督による監督賞の受賞、そしてSKIPシティアワードとのW受賞を果たしている。
ポン・ジュノ、山下敦弘のもとで研鑽を積んできた片山慎三
ある港町を舞台に、生活のために犯罪に手を出す障がいを持つ兄妹の姿を追う『岬の兄妹』(18)。本作はポン・ジュノ監督や山下敦弘監督のもとで助監督として研鑽を積んできた片山慎三が、初めて監督を務めただけでなく、脚本や編集、プロデュースまで行い、1年間、季節ごとの撮影を繰り返すなど、完成に2年以上をかけた骨太な力作だ。仕事を干された兄が、自閉症の妹に売春を斡旋し、犯罪に手を染めていく姿をカメラに収めることで、地方都市の暗部に切り込み、家族の本質を問いかけていく。
節目となった2018年の第15回開催において、国内コンペティションの長編部門で優秀作品賞と観客賞をW受賞。審査員からも「選考は非常に難航した。障がい者や売春を描いている本作には、おそらく賛否両論があると思う。しかし、この映画の最後のシーンに、前向きなメッセージを感じることができて非常に感動した」という温かなエールが送られている。