過去の受賞作品から見る「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」歩み…次なる出身監督の注目作は?
アニメーション作品や海外作品が話題になるきっかけに
アニメーション作品・実写を問わず、コアな題材をポップに包んだコメディを作り続けるふくだみゆき監督による『こんぷれっくす×コンプレックス』(15)も、2016年のアニメーション部門で最優秀作品賞を受賞。同級生男子の“わき毛”が気になってしょうがない女子中学生の揺れる思いをユーモラスに描き、毎日映画コンクールや下北沢映画祭など、様々な映画祭で主要な賞に輝き話題を集めた。
海外作品では、スウェーデンのファンタジーコメディ『シンプル・シモン』(10)の活躍も記憶に新しい。2011年の長編部門で審査員特別賞に輝いており、2014年に日本でも48館で劇場公開された際は、口コミが広がりスマッシュヒットを記録した。
中国の深圳市を舞台に、上海の写真家、ユイ・ハイボーとその娘、キキ・ティンチー・ユイが監督を務め、20年間もゴッホの複製画を描き続けた男に迫るドキュメンタリー『世界で一番ゴッホを描いた男』(16)。『中国のゴッホ』という邦題で2017年のコンペティション部門に選出され、見事、監督賞を獲得した。日本での劇場公開に先駆け、「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018」のクロージング作品としてプレミア上映もされている。
『滑走路』の水川あさみ、浅香航大が語る!監督、大庭功睦とは?
32歳で命を絶った歌人、萩原慎一郎の歌集に着想を得た『滑走路』(11月20日公開)で監督を務めた大庭功睦もまた、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で高く評価されてきた映像クリエイターの1人。今年の注目作の一つであるこの『滑走路』の製作には本映画祭も深く関わっている。
本作では、水川あさみ扮する自分のキャリアに不安を感じている切り絵作家の翠、浅香航大扮する若手官僚の鷹野と、そして新人の寄川歌太が演じるいじめの標的になってしまった中学生の3人が、一人の人物の死を巡り交錯していく様子が描かれている。
大庭監督の印象について、水川あさみは、「見た目は大きくて、いかつい感じなんですけど、本当に優しくて、こちらが投げかけた質問や疑問に対して、1尋ねると100返してくれるくらい丁寧で、すてきな監督。役者のことも信頼してくださる監督だったので、とてもいい雰囲気の現場でした」と大庭組での撮影を振り返った。
続いて浅香航大は「大庭監督は繊細ながらもとても大胆。脚本作りからディレクションも含め、緻密に計算されていて熱量のある監督。常に一番近いところで寄り添い向き合ってくれた」と鷹野を演じる上で大庭監督の存在が大きかったことを述懐。
2人が口を揃えて、作品を観た人に“寄り添ってくれる映画”だと語った本作の公開もいまから楽しみだ。
今回紹介した監督や作品を振り返ってみても、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の映画界への貢献は計り知れない。2020年開催からも、将来大きく羽ばたいていくクリエイターが誕生する可能性があるので、ぜひチェックしてみてほしい。
文/トライワークス