【今週の☆☆☆】二宮和也主演の『浅田家!』、ヒロイン像に圧倒される『エマ、愛の罠』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は今週末の公開作品をピックアップ。『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太監督による実話ベースの感動作、美しく情熱的なダンサーのある計画を描く衝撃作、ナチ政権下のドイツで生きた若き芸術家の物語と、感動と興奮を誘う3本をご紹介!
“写真”を通して描かれる家族の強い絆…『浅田家!』(公開中)
家族写真を撮り続ける写真家、浅田政志の半生を基にしたヒューマンドラマ。消防士やバンドマン、レーサーなどになりきった自分の家族にカメラを向け、つい笑ってしまう写真で名声を得る前半から、東日本大震災後の東北の被災地で家族を撮ろうとする後半へ。ノリノリで写真撮影に応じる浅田家の人々の姿はユーモラス。一方で、愛する家族を亡くしてしまった被災地の人々に、どうカメラを向けるべきかを模索する主人公の苦悩が、家族の強い絆とともに、ジンワリと胸に染み込んでくる。ボーっとしているようで、それでも撮りたいものを撮ろうとする主人公に扮した二宮和也の好演も見事。笑いと涙の感動作に昇華した中野量太監督の手腕にも注目!(映画ライター・有馬楽)
頭で考えていたら乗り遅れる常識はずれな衝撃作!『エマ、愛の罠』(公開中)
『ナチュラルウーマン』で製作を務めたチリの名匠、パブロ・ララインの監督作は突き動かされるレゲトンのリズムに身を委ね、色の嵐の映像のなかに飛び込んでこそ楽しめる、頭で考えていたら乗り遅れてしまう常識はずれな衝撃作である。有名な振付家の夫との結婚生活が破綻したダンサーのエマ。男性も女性も魅せられずにはいられない不思議な色気を放つ彼女は夫という枷が外れ、ますます自由になっていく。離婚弁護士の女性を誘惑。さらに放火をして、消防士の男を手玉に取る。彼は女性弁護士の夫でもあった。次第にわかっていくエマの計画。目的のためには犯罪も厭わないエマの魂胆に気づいた時には登場人物たち同様、観客も彼女に心を奪われている。エマ役のマリアーナ・ディ・ジローラモはこれが初主演ながら、監督が会って10分で主演を決めた逸材。夫役のガエル・ガルシア・ベルナルさえ存在感が薄れる彼女の妖艶なダンスを体感せよ。(映画ライター・髙山亜紀)
「自分にしかできない表現」の誕生を目撃!『ある画家の数奇な運命』(公開中)
『ROMA/ローマ』や『万引き家族』などハイレベルな争いとなった、昨年のアカデミー賞外国語映画賞(現・国際長編映画賞)。そこにノミネートされていた一本なので、見ごたえという点では保証済みだ。監督はすでに『善き人のためのソナタ』で同賞を受賞している、ドイツの名匠、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。ナチス政権下のドイツで芸術にめざめた少年のクルトが、大戦後の社会の大きな変化をバックに、唯一無二のアーティストへと成長していく。最初のインスピレーションを与えてくれた叔母が迎える悲劇、東ドイツの社会主義と国民の監視、あまりに運命的で切ないラブストーリー、そして西側で知る芸術の自由な空気…。激動の運命を送るクルトだが、演じるトム・シリングが、すべてを寛容に受け入れるような柔らかな表情で共感を誘いまくる。モデルとなったのは、ドイツでも最高峰の画家といわれるゲルハルト・リヒター。人生を振り返り、「自分にしかできない表現」を完成させる瞬間は、まさにひとつのアートの誕生。魂が揺さぶられる!(映画ライター・斉藤博昭)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス