『犬鳴村』『事故物件』から『樹海村』へ…ヒット相次ぐ“Jホラーブーム”再燃のワケ

コラム

『犬鳴村』『事故物件』から『樹海村』へ…ヒット相次ぐ“Jホラーブーム”再燃のワケ

『犬鳴村』と『事故物件』の共通点がヒットのカギ?

Jホラー久々の大ヒット作となり、2020年上半期の話題をさらった『犬鳴村』
Jホラー久々の大ヒット作となり、2020年上半期の話題をさらった『犬鳴村』

前置きが長くなってしまったが、そこに来ての『犬鳴村』と『事故物件 恐い間取り』のスマッシュヒットだ。しかも、関係者もビックリの予想以上のヒットである。いったいなぜ、この2本のJホラーに人々は飛びついたのか?


そう思いながらこの2作を観れば、ある共通点に気づくだろう。そう、どちらも実話、あるいは忌まわしい噂で知られる実在の場所がモチーフになっている。『犬鳴村』は福岡県宮若市にある、いまは完全に封鎖されている心霊スポット「旧犬鳴トンネル」に伝わる様々な恐ろしい噂をベースにストーリーを構築。「そのトンネルを抜けた先に村があって、そこで〇〇を見た」という展開が人々の好奇心を触発し、映画が公開されるとモデルになった「旧犬鳴トンネル」を訪れた人も多いという。
『事故物件 恐い間取り』も、数々の事故物件に住んできた“事故物件住みます芸人”の松原タニシの実体験=実際に起きた霊との遭遇を映画化したところに、多くの人が惹かれたのは間違いない。

ダークサイドに魅せられる人間の欲求を刺激

『事故物件 恐い間取り』のBlu-rayは、2月10日(水)に発売される
『事故物件 恐い間取り』のBlu-rayは、2月10日(水)に発売される[c]2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

「怖いもの見たさ」という言葉があるが、人間という生き物は、科学では解明できない謎に迫りたいという欲求を抑えられないおかしな習性がある。恐ろしい結果を招くと知りながらも、そこにズブズブと足を踏み入れてしまう、ダークサイドに対する憧憬があるのも否めないところで、実際にあったこととなれば、その欲求と憧憬の数値もグ~ンと跳ね上がる。
しかも、その衝動が日本人だけではなく万国共通であることは、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」シリーズや「パラノーマル・アクティビティ」シリーズが次々に作られ、世界中で大反響を巻き起こした状況を見れば明らか。今回の2作の大ヒットは、そんな人間の矛盾した“性”にピタリとハマった結果なのだ。

主人公のヤマメを応援するメイクアシスタントの小坂梓(奈緒)ほか、周囲も底なしの恐怖に飲み込まれていく…
主人公のヤマメを応援するメイクアシスタントの小坂梓(奈緒)ほか、周囲も底なしの恐怖に飲み込まれていく…[c]2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会

ただ、この2作のルックはまるで違う。そこもおもしろい、特筆すべきことだろう。『犬鳴村』は巷に広がる都市伝説と映画用の設定を絶妙な塩梅で絡めたストーリーを、フェイクドキュメンタリーのように視覚化。笑いをいっさい排除し、映画の最後には実際の「旧犬鳴トンネル」も映すことで、観る者の脳裏にリアルな恐怖を焼きつけた。
それに対して、『事故物件 恐い間取り』は、中田監督が「『リング』のようなウェットなホラー表現ではなく、“オモシロ怖い”ものを目指す」と公言していたように、恐怖を最高のエンターテインメントに。亀梨和也演じる主人公のヤマメが部屋を移り住むごとに、そこに棲み着いている霊の死因や呪いのタイプを変え、心霊現象のレベルを上げながらクライマックスではそれが最高潮に達する、まるでテーマパークのアトラクションのような演出を徹底。笑いも随所に入れ、『スマホを落としただけなのに』(18)、『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(20)の成功で確信を得た、フィクションならではの過剰とも思える演出を全開にすることで、恐怖を増幅させることにまんまと成功した。

「呪怨:呪いの家」の生々しい恐怖も話題に…

Netflixオリジナルシリーズ「呪怨:呪いの家」も配信で公開され話題となった
Netflixオリジナルシリーズ「呪怨:呪いの家」も配信で公開され話題となったNetflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』』独占配信中

そんな2大レジェンドの復活と時を同じくして、Netflixで「呪怨:呪いの家」が配信されたのも偶然ではないだろう。本作は『リング』、『呪怨』の一瀬プロデューサーと、『リング』の脚本を書いた高橋洋によるオリジナルシナリオを、一瀬が監督した『帝都大戦』(89)にも参加したスクリーミング・マッド・ジョージによる特殊メイクなどを駆使して映像化した全6話からなるドラマシリーズ。


世界190か国以上で同時配信されているが、今回はビデオや映画シリーズでおなじみの“伽耶子”や“俊雄”といったわかりやすいホラーアイコンは使わず、人間の闇に迫る曖昧な恐怖、実話に基づく真実か都市伝説かわからない「呪怨」の真のドラマを紡ぎだすことに挑んだ。
ホラー演出を得意とする監督は起用せず、『Playback』(12)、『きみの鳥はうたえる』(18)などの作品で人間描写に定評のある三宅唱監督が演出を担当し、撮影には不気味な雰囲気が漂う古民家を使用。あの生々しさ…実際の出来事かもしれないと思わせるその不穏なムードは『犬鳴村』とも共通し、2021年のJホラーの注目作『樹海村』にも引き継がれている。

■『犬鳴村』
Blu-ray 発売中
価格:5,800円+税
発売基:東映ビデオ
販売元:東映

■『事故物件 恐い間取り』
2月10日(水)発売
価格:Blu-ray豪華版(初回限定生産:3枚組) 6,700円+税、Blu-ray通常版 4,700円+税
発売・販売元:松竹

■『リング』
Blu-ray 発売中
価格:3,800円+税
発売元:ポニーキャニオン
販売元:株式会社KADOKAWA

■『呪怨 劇場版』
Blu-ray 発売中
価格:2,500円+税
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

呪いに翻弄される姉妹の運命に絶句…『樹海村』予告編をチェック


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