細田守や原恵一の作品と『えんとつ町のプペル』の共通点は?“大人も泣ける”秘密を探る

コラム

細田守や原恵一の作品と『えんとつ町のプペル』の共通点は?“大人も泣ける”秘密を探る

2016年に発売されるや幅広い世代から圧倒的な支持を集め、累計発行部数60万部を突破した西野亮廣原作の同名絵本を、『海獣の子供』(19)などのSTUDIO4℃制作でアニメーション映画化した『映画 えんとつ町のプペル』(公開中)。本稿では、本作と日本のアニメーション映画の名作をつなぐある共通点を明らかにしたい。

本作は星を信じる少年ルビッチと、ハロウィンの夜にゴミから生まれたゴミ人間のプペルが冒険を繰り広げる、絵本では描かれなかったえんとつ町の“本当の物語”。厚い煙に覆われたえんとつ町に現れたプペルは、自分がゴミでできていることを知られ、あっという間に町の異端者に。追われる身となったプペルは、同じように住人からのけ者にされていた少年ルビッチと出会い、彼の背中を押すことでルールに縛られたえんとつ町に大きな変革を与えていくことに。

同じく住人からのけ者にされていた少年ルビッチと出会い友だちになったプペル
同じく住人からのけ者にされていた少年ルビッチと出会い友だちになったプペル[c]西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

感情を押し殺して生きてきた人々の背中を押すプペルは、えんとつ町のなかでは“異質な存在”。実は、近年世界中で高い評価を得ている日本のアニメーション映画の多くには、こうした“異質な存在”が登場し、物語をより豊かにしているのだ。


その代表的な作品は、「クレヨンしんちゃん」シリーズで知られる原恵一監督が手掛けた『河童のクゥと夏休み』(07)。現代の人間社会に突如として現れたクゥが、平凡に暮らしていた康一と出会い友情を育んでいく同作は、河童という異質な存在を通して環境問題やマスコミの報道過熱といった社会問題を描く側面も。

また、最新作『竜とそばかすの姫』(2021年夏公開)の製作が発表されたばかりの細田守監督の『バケモノの子』(15)も、人間界に生きる少年の九太と、バケモノである熊徹の親子のような師弟関係を描くなど、“異質な存在”が物語の大きな軸に。

『映画 えんとつ町のプペル』は大ヒット公開中!
『映画 えんとつ町のプペル』は大ヒット公開中![c]西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

こうしたアニメーション映画における“異質な存在”は、物語の終盤にある大きな選択を迫られることが多い。異質であるがゆえ、それまで育んできた友情や絆がありながらも、同じ世界に留まるか否かという厳しい選択に葛藤することになる。
物語に深みやおもしろさを与え、かき回し、そして観客の心を動かす“異質な存在”。この『えんとつ町のプペル』では、そんな“異質な存在”であるプペルと、共に旅をするルビッチにどのような展開が待ち受けているのか。
ぜひとも劇場に足を運び、感動のクライマックスを目撃してほしい。

文/久保田 和馬

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