ぶっ飛び『ゾンビ津波』に『スカイ・シャーク』、ジョニデ出演作まで…「未体験ゾーンの映画たち2021」より刺激的な4本をピックアップ!
ジョニー・デップが冷徹でサディスティックな警察官僚を演じる『ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏』
アクの強い2本から打って変わって、今度はジョニー・デップ出演の重厚な歴史ドラマ『ウェイティング・バーバリアンズ 帝国の黄昏』(公開中)を紹介したい。時は19世紀、アフリカにある帝国に支配された辺境の町に、ある日「蛮族が攻めてくる」という噂が流れる。治安維持のため、中央政府から警察官僚が派遣されるが、それは激しい弾圧と拷問の始まりだった…。
冷徹でサディスティックな警察官僚をデップが演じ、新境地を開拓。さらに、その副官役を『TENET テネット』(20)での爽やかな存在感も記憶に新しいロバート・パティンソンが務めるほか、穏健な姿勢で警察官僚と対立する地元の民政官役に『ブリッジ・オブ・スパイ』(15)で米アカデミー賞助演男優賞を受賞したマーク・ライランスが扮している。
ノーベル賞受賞作家、J・M・クッツエーが自身の作品「夷狄を待ちながら」を脚色した作品で、『彷徨える河』(15)で第88回アカデミー賞外国語映画賞(現、国際長編映画賞)にノミネートされたシーロ・ゲーラが監督。『キリング・フィールド』(85)や『ミッション』(87)などで知られるオスカー受賞の名カメラマン、クリス・メンゲスによる絵画のように美しい映像は必見だ。
7分間だけのタイムトラベルを描くSFスリラー『シンクロニック』
最後はタイムトラベルを巡るSFスリラー『シンクロニック』(公開中)。ニューオリンズの救急隊員で長年の親友であるスティーブとデニスは、連続して発生している奇妙な事故の現場に到着する。そこでシンクロニックと呼ばれる非合法のドラッグが見つかり、その幻覚作用が事故の原因だと断定される。そんなある日、デニスの長女が突然姿を消してしまい、失踪にシンクロニックが関係していると気づいたスティーブは自ら効果を試すことに。しかし、彼が体験したのは幻覚ではなく、7分間だけ別の時代へ移動するタイムトラベルだった…。
主人公の一人、スティーブを演じるのは「キャプテン・アメリカ」や「アベンジャーズ」シリーズでのファルコン役でおなじみのアンソニー・マッキー。その親友デニス役を「フィフティ・シェイズ」シリーズで支配欲が強くてセクシーなイケメン大富豪を好演したジェイミー・ドーナンが務め、本作では家族を愛するやさしい父親という役柄で登場する。
『アルカディア』(17)が映画ファンの間で話題となったアーロン・ムーアヘッド&ジャスティン・ベンソンの俊英コンビが監督を務め、『ブレードランナー 2049』(17)や『キングスマン:ゴールデン・サークル』(17)などを手がけ、高度な映像制作の技術を持ち味とするBUFカンパニーがVFEを担当するなど、まさに“未体験”な映像世界が展開される。
今回紹介した作品以外にも、片腕をチェーンソーや斧、ドリルに改造された女性たちが戦う『バースト・マシンガール』(公開中)や、巨大洞窟探検に出かけた若者たちが獰猛な人喰いクロコダイルに襲われる『ブラック・クローラー』(公開中)、オスカー女優のヘレン・ハントが主演するホラー『フロッグ』(3月19日公開)といったタイトルが次々と登場。さらに、『世界残酷物語』(62)などのグァルティエロ・ヤコペッティによる異色ドキュメンタリー映画“残酷”シリーズも上映される。気になる作品があれば、ちょっとした冒険気分でチェックしてみてほしい。
文/平尾嘉浩