ついに明かされる『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』の深層…高橋栄樹監督が読者の疑問に次々回答
「ヒューマントラストシネマ渋谷のOdessa音響で観る『僕たちの嘘と真実』最高でした。あの会場だけで10回近く観に行きました。個人的に、ライブが次々に中止になった2020年を救ってくれた存在です。ここまで音にこだわったのはどうしてですか?」(20代・男性)
「ライブの映像作品があまり世に出ていなかったということが大きな理由の一つです。欅坂46はメンバーもグループ名も変わり、もうかつてのライブそのままの再現ができないので、可能な限り彼女たちのパフォーマンスを現実に近い形で残したいという強い想いがありました。
今回ミキシングを担当してくれたのが北田雅也さんという、元々は『鉄男 THE BULLET MAN』など塚本晋也監督の現場で音響効果とミックスをされている方です。彼が担当した『野火』という作品がすばらしく、ある種の戦闘状態に置かれた欅坂46のドキュメンタリーは戦争映画を手掛けたことがある人にやってもらいたいと思っていたのでお願いしました。ライブのシーンの臨場感はまさに北田さんの手腕によるものでしたし、後で音付をした音響効果もすごく場に馴染んでいる。さすがだなと思いました」
「曲の音源をメンバーのイヤモニから流れるものにしたのは何故ですか?」(10代・男性)
「あれはライブ制作側から拠出していただいた音だったと思います。北田さんのほうでミックスしていただいたのですが、『ガラスを割れ!』のパフォーマンスで平手さんが落下する時に、マイクとぶつかるようなボコっという異質な音が入っていて、それを聴いたときに『どうなってるの?』と北田さんに訊ねたら『全部のマイクのトラックがあるんです』と言われたんです。それで一個一個のトラックを聴いていき、そのなかからリアルな音を活かそうということになりました。そこにイヤモニの音源も含まれていたんです」
「編集の伊藤潤一さんに、作品構成上で注文したことはありますか?」(20代・男性)
「注文をしたというよりは、まるで2人で延々とシナリオ書きをしているような作業でした。小さな紙に括弧書きしたものを貼りだして、順番を並べ替えながらどうしようかと考えながらやっていきましたので、2人で構成を作ったような部分があります。もちろんその作業をしている間にも新しい素材がどんどんやってきます。先行して過去映像をまとめていただき、2019年の夏に東京ドームのライブが終わった直後にインタビューの撮影に入り、それまで撮りためていた様々な映像と共に実際に編集を始めたのは10月くらいだったと記憶しています。それから丸3か月くらい作業が続く間にもいろいろなことが起こり、構成を変えざるを得なくなったこともありましたが、2020年の1月末には一度完成していました」
「劇場パンフレットにて、高橋監督がデヴィッド・フィンチャー監督作品を構成の参考にしたと発言があり、いち映画ファンとして腑に落ちたところがありました。当初の構成では参考作品のような、『平手友梨奈さんがいなくなる』ことをより意識した作品だったのではないかと勝手に思っております」(20代・男性)
「当初から、『ファイト・クラブ』のように、我々も含め観客自身がこの欅坂46というグループを作りだしている、すべては自分に降りかかっていることであり、自分自身が加担しているような部分を突きつけられる映画にすべきではという議論がありました。撮影や編集などすべてが同時進行のなかで、どういう構成にするか悩むうちに『ソーシャル・ネットワーク』などが頭をよぎり、改めてフィンチャー監督の作品を参考にしていったような気がします」
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