ついに明かされる『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』の深層…高橋栄樹監督が読者の疑問に次々回答
「平手友梨奈と前田敦子、どちらもセンターを務めた二人ですが、高橋栄樹監督が感じた二人の似ている所または似ていない所はありますか?映画を制作して感じた欅坂46とAKB48のアイドル像の違いはありましたか?」(30代・男性)
「前田さんと平手さんは、似ていると言えば似ているのかもしれません。前田さんはセンターとして輝きを増していくなかで、どんどん人格や雰囲気といった“個”の部分が埋没していったけれど、平手さんは逆に突出していった。真逆だけれど、本質的には似ている部分があると思います。前田さんがAKB48を卒業するタイミングで制作した『DOCUMENTARY of AKB48 NO FLOWER WITHOUT RAIN 少女たちは涙の後に何を見る?』の時にも、卒業に向けて集中していく彼女のインタビューは撮ることができなかった。そのなかで前田さんをどう描くかをあの時も考えていたから、今回の作品もそれを踏まえて考えていた部分があります。
グループとしてはAKB48と欅坂46では全然違うものという気がしています。AKB48は『軽蔑していた愛情』から15年以上MVを撮ってきましたので、長い時間を過ごしているうちに自然と仲間になっていきました。でも欅坂46はデビュー当時から直接知っているわけでもないし、新参者として向き合うことになった。正直はじめは自分と関わる機会のないグループだと思っていたので依頼があった時は意外でしたが、だからこそドキュメンタリーの監督としては至極真っ当に接することができたとも思います。
AKB48はオーソドックスなアイドルグループで、進歩の過程のような成長物語を見せてくれたけれど、欅坂46の場合は最初から完成していた。たとえ発展途上の部分があっても、それを平手さんという存在がカバーしていて、完成されたイメージが強くあった。MVを撮っていた方よりも客観的な視点で彼女たちを見なければ、グループの特異性を見抜けないのかなと思っていました」
「AKBのドキュメンタリーと、欅坂のドキュメンタリーを監督して何か違うところはありましたか?」(20代・男性)
「欅坂46の場合は怒涛のようにいろいろな物事が動いていました。『黒い羊』から長いことシングルをリリースしていなかったため、メンバーの心境も足踏み状態だったと思います。そこから東京ドーム公演があって、その辺りには『このままで来年も頑張って行こうね』という感じは見えず、映画を作っている最中にも新たに入ってくる出来事にどのように言及していくのかを都度考えなければいけませんでした。新しい情報であれば鮮度は良いけれど、取り扱いを間違えるとそのまま作品に定着してしまう。
配信ライブ『KEYAKIZAKA46 Live Online, but with YOU!』でグループが改名を発表するということも、現場で本番ギリギリに聞いたんです。香盤表を見たら曲順のところに『菅井スピーチ』とかなり長い時間を取って書いてあって、『これはなんですか?』とスタッフの方に訊ねると、改名発表だと。そこで初めて知ったので、あの準備の様子はどういうことが起きるのかわからないまま撮っているんです。撮りながら確認していくということが、AKB48のドキュメンタリーに比べると多くありましたね」
「本編と『OUTTAKE』の両方を見ると高橋監督は欅坂の本質を映像化する気概が感じ取れます。『OUTTAKE』制作時のエピソードを教えて下さい」(40代・男性)
「パッケージを作る上でどういう特典映像を入れるかと考えて思い付いたのが『OUTTAKE』でした。よくロックバンドの周年アルバムにアウトテイクと呼ばれるものやデモテープが収録されていて、それを聴けば作品が作られたプロセスがわかったり、遡って知ったりすることができる。なのでそのイメージで『OUTTAKE』というタイトルにしました。
いわばパッケージを買っていただいたファンの方に向けた断片集なので、劇場公開するものとは異なりメンバーの紹介もありませんし、出来事も説明していないので、グループのことを知らない人が観ても、よくわからないのではないかと思います。でもパッケージを買われた方は映画で描かれたことも知っていて、なにより欅坂46の知識もある。きっと観ている方のほうで補完してもらえると思って、エッセンスだけで作ることにしました。ですので、あくまでもいままで欅坂46を観てくれていた方に向けた、いわば補完映像というニュアンスです。
たぶんこれすらも時系列をバラバラにしていたら、大ひんしゅくを買っていたことでしょうね…(笑)。はじめは40分くらいを希望されていましたが、これはこれでファンの方が1本の作品として鑑賞できるように仕上げたかったので、96分の長編になりました」
「本編の音質(バイノーラルステレオ)に心底感激しました。家のパソコンで映像を見て、劇場にいたときに感じた臨場感を味わえるとは夢にも思いませんでした。願わくば今後のグループの映像作品は全部この音質にして欲しいと思うほどです。これはやはりコストや手間がかかるものなのでしょうか」(20代・女性)
「喜んでいただけてうれしいです。コストや手間はかかりますが、北田さんの提案に対し、東宝さんがとても寛容に『やりましょう』と言ってくれたおかげで実現しました。作業行程は、サウンドステージというダビングするステージで、バイノーラルヘッドを立ててまるまる映画一本を録音し、その間は物音を立てないように誰も中に入ることができないというものです。それを1回だけでなく2回も3回も行わなければならないため、ダビングだけで1日使うことになり、スタジオ代や人件費などのコストがかなり掛かりました。
それにバイノーラルヘッドのレンタルなど、ほかにも協力していただくことが沢山あったので、準備段階を含めればもっと掛かる。僕自身、パッケージでバイノーラル録音を行うのは初めてでしたが、完成したものを聴いてみると一聴瞭然で、ライブの場所の空気感、臨場感は大きな差があり、やってみてよかったと思いました」
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