コラム 2021/2/27 20:30

違いを受け入れ、障がいを乗り越える愛…『マーメイド・イン・パリ』など人間と異種族との絆を描く映画たち

運命に翻弄される人魚と青年とのキュートな恋模様『マーメイド・イン・パリ』

恋を知らず、その美しい歌声で男性を魅了し、心臓を破裂させてしまう人魚のルラ(マリリン・リマ)と、過去の失恋の経験から、恋する感情を捨ててしまったパフォーマーのガスパール(二コラ・デュヴォシェル)。ふたりのおとぎ話のようなラブストーリーが描かれるのが、『マーメイド・イン・パリ』だ。セーヌ川のほとりで傷つき倒れていたルラを見つけたガスパールは、介抱のため自宅へ連れ帰ることに。恋心を失ったガスパールは人魚の歌声を聞いても平気で、やさしく献身的な彼に、ルラは戸惑いつつも心を許していく。

美しい歌声で人間の男性の心臓を破裂させてしまうルラ(『マーメイド・イン・パリ』)[c]2020 – Overdrive Productions – Entre Chien et Loup – Sisters and BrotherMitevski Production – EuropaCorp - Proximus

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監督を務めるのは、音楽、小説、映像とマルチな分野で活躍するマチアス・マルジウで、劇中の音楽も彼が率いるバンド、ディオニソスが手がけている。いまにも踊りだしたくなるようなルラとガスパールのことを歌った楽曲をはじめ、飛び出す絵本やミュージカルのようなシーン、ガスパールの部屋に並べられたレトロなおもちゃの一つ一つも愛おしく、その独創的な世界観で楽しませてくれる。

パフォーマーで人を楽しませることが大好きなガスパール(『マーメイド・イン・パリ』)[c]2020 – Overdrive Productions – Entre Chien et Loup – Sisters and BrotherMitevski Production – EuropaCorp - Proximus

一方で、ルラは2日目の朝日が昇る前に海に帰らないと命を落としてしまい、彼女と触れ合ううちに恋する気持ちを取り戻し始めたガスパールも胸を締め付けるような痛みを感じ始める。さらに、ルラにフィアンセを殺された女医の執拗な追跡も迫るなど、微笑ましいピュアな空気感の中にほどよいスパイスも散りばめられている。

ガスパールは父親が経営する老舗のバーにルラを招待する(『マーメイド・イン・パリ』)[c]2020 – Overdrive Productions – Entre Chien et Loup – Sisters and BrotherMitevski Production – EuropaCorp - Proximus

互いに違いを受け入れ、障害を乗り越えていく姿も魅力な、異種族間の絆を描く作品たち。人と人とのつながりが希薄になりがちな現代社会だからこそ、今回紹介したような作品を観て、改めて誰かと関わる大切さを考えてみたい。

文/平尾嘉浩

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