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天才、それとも異端!?発明家、二コラ・テスラを映画はどう描いてきた?

コラム

天才、それとも異端!?発明家、二コラ・テスラを映画はどう描いてきた?

人智を超えた装置を開発する『プレステージ』版のテスラ

『ダークナイト』(08)や『TENET テネット』(20)のクリストファー・ノーラン監督が、ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールの共演で手がけた『プレステージ』(05)。クリストファー・プリーストの小説「奇術師」を原作とし、19世紀末を舞台に、2人の人気マジシャンの確執や難解なトリック合戦が展開される。

華やかな演出で観客を魅了するアンジャー(『プレステージ』)
華やかな演出で観客を魅了するアンジャー(『プレステージ』)[c] Touchstone Pictures. All rights reserved.

脱出マジックや瞬間移動といったマジックやジャックマンとベールの演技バトル、ノーランらしい時系列が複雑に絡み合ったストーリーが見どころの本作だが、テスラも重要人物として登場している。しかも演じているのは、言わずと知れたロックレジェンド、デヴィッド・ボウイ!

過去の出来事から互いを激しく憎み競い合う、「偉大なるダントン」のステージネームで人気のマジシャン、アンジャー(ジャックマン)と「教授」と呼ばれるボーデン(ベール)。ボーデンが披露した完璧な瞬間移動を目の当たりにしたアンジャーが、彼に対抗するため協力を求める相手がテスラだ。

『プレステージ』でテスラを演じるのはデヴィッド・ボウイ
『プレステージ』でテスラを演じるのはデヴィッド・ボウイ[c] Touchstone Pictures. All rights reserved.

劇中でのテスラは、エジソンとの競争に追われ、アメリカのコロラド・スプリングスにある山奥の発電所のような荒れ果てた施設で隠居生活を送っている。ロンドンのアルバートホールで大がかりな装置(テスラコイル?)を使ったクリーン・エネルギーの発表会を行うシーンもあるが、エジソンからの中傷行為で登壇を断念したり、彼が放った刺客から追われる身だったりと電流戦争による軋轢にも触れられている。

一方で、遠く離れた発電所から電気を供給し、地面に埋め込むだけでいくつもの電球を発光させるなど、その才能と実力は本物。詳しくはネタバレになるので説明できないが、アンジャーに提供した装置も人智を超えたとんでもないもので、彼への置き手紙で「これは壊せ。悲劇をもたらすだけだ」と言い残している。その手紙にはほかに、「非凡や驚異は科学界では認められない」とも記しており、多少のファンタジーを含みながらも、科学への純粋過ぎる探求心ゆえに周囲から孤立していったテスラの憂いを感じさせる。

テスラが開発したとんでもない装置とは?(『プレステージ』)
テスラが開発したとんでもない装置とは?(『プレステージ』)[c] Touchstone Pictures. All rights reserved.

エジソンとの対立、資金難に苦しむ姿も描く『エジソンズ・ゲーム』

『ドクター・ストレンジ』(16)のベネディクト・カンバーバッチが主演を務め、『マン・オブ・スティール』(13)でゾッド将軍を演じたマイケル・シャノンや「X-MEN」シリーズのニコラス・ホルト(ビースト役)、スパイダーマン役で人気のトム・ホランドといったアメコミ俳優たちが共演したことでも知られる『エジソンズ・ゲーム』(19)。「電流戦争」にエジソン(カンバーバッチ)とウェスティングハウス(シャノン)の視点から迫った本作にももちろん、テスラ(ホルト)は登場する。

エジソンとウェスティングハウス、テスラによる電流戦争を描いた『エジソンズ・ゲーム』
エジソンとウェスティングハウス、テスラによる電流戦争を描いた『エジソンズ・ゲーム』[c] 2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved

天才発明家として名を馳せ、大量の発電機が必要とされる“直流”による送電方式にこだわるエジソンと、遠くまで電気を送れて安価である“交流”が優れていると考えるウェスティングハウスの対立や、交流を危険視するエジソンのネガティブキャンペーンが描かれる本作。テスラはこの2人の間を渡り歩いていくわけで、彼がエジソンの会社を訪れ、面接を受けるところも確認できる。そこからすでに、直流派のエジソンと交流派のテスラの意見はぶつかっており、提示された報酬額も低廉だったため不満げな顔を見せている。

エジソンのもとでテスラは、交流の利便性を訴えるも聞く耳を持ってもらえず、5つの課題をクリアすれば5万ドルを支払うという約束も「あれは冗談だった」と反故にされてしまう。その後は投資家の出資を受けて独立するも事業がうまくいかず、クビを宣告されただけでなく特許も奪い取られるなど、ウェスティングハウスに出会うころにはすっかり落ちぶれた姿に。それでも、ナイアガラの滝を使った電力システムをウェスティングハウスに熱弁する姿は意欲にあふれており、数百万ドルの報酬で彼と契約を結ぶことに成功する。

ニコラス・ホルト演じるテスラ(『エジソンズ・ゲーム』)
ニコラス・ホルト演じるテスラ(『エジソンズ・ゲーム』)写真:SPLASH/アフロ

エジソンとウェスティングの物語が中心ではあるが、すばらしいビジョンは持っていてもそれを発揮する場所がなく、通貨やビジネスシステムに翻弄されるテスラの苦労も短い時間ながら本作ではしっかりと映しだされている

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