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天才、それとも異端!?発明家、二コラ・テスラを映画はどう描いてきた?

コラム

天才、それとも異端!?発明家、二コラ・テスラを映画はどう描いてきた?

謎めいたテスラの実像に独自の視点で迫る『テスラ エジソンが恐れた天才』

上記2本では重要なキーパーソンというポジションだったテスラだが、彼を主人公にその苦悩と悲哀に満ちた半生に迫った伝記映画が『テスラ エジソンが恐れた天才』(21)だ。テスラ役は『ブルーに生まれついて』(15)で実在のトランペット奏者、チェット・ベイカーを完璧に演じきった名優イーサン・ホーク。そのライバル役のエジソンには、「ツイン・ピークス」シリーズなどのカイル・マクラクランがキャスティングされている。

【写真を見る】『テスラ エジソンが恐れた天才』より、互いの顔にアイスをぶつけ合うテスラとエジソン
【写真を見る】『テスラ エジソンが恐れた天才』より、互いの顔にアイスをぶつけ合うテスラとエジソン[c] Nikola Productions, Inc. 2020

物語の前半はテスラとエジソンの関係性に深く切り込み、敵対しつつも科学者として互いに強く意識する複雑なつながりが示唆されている。さらに、電流戦争に勝利したあとのテスラの活躍も描かれ、学会から無視されてきた彼に大学から名誉学位が授けられ、大富豪や有名俳優とも知り合いになるなど、一躍時の人に。しかし、高周波の電磁パルスによる情報の送電システムの研究にのめり込んでいくなかで、しだいに孤独への道を突き進んでいく。

テスラを演じるイーサン・ホーク(『テスラ エジソンが恐れた天才』)
テスラを演じるイーサン・ホーク(『テスラ エジソンが恐れた天才』)[c] Nikola Productions, Inc. 2020

本作では繊細すぎるテスラの内面も浮き彫りに。長身で美男子だった彼は女性人気も高かったが、性的関心がなく、生涯独身だったと言われている。劇中では、大富豪のJ・P・モルガン(ドニー・ケシュウォーズ)の娘、アン(イヴ・ヒューストン)やフランス人女優のサラ(レベッカ・デイアン)とも親しくなるが、テスラは研究一筋で自分の流儀でしか近づけない。出資者たちの政治的駆け引きや歪んだ人間関係にもさらされ、精神的に疲弊してしまう姿はなんとも痛々しい。

怪しげな装置の前で佇むテスラ(『テスラ エジソンが恐れた天才』)
怪しげな装置の前で佇むテスラ(『テスラ エジソンが恐れた天才』)[c] Nikola Productions, Inc. 2020

インターネットやスマホも登場する斬新な演出

監督を務めるのは、シェイクスピアの戯曲を原作としながら舞台を現代に置き換えた『ハムレット』(00)と『アナーキー』(14)でホークとタッグを組んだマイケル・アルメイダ。斬新な演出は本作にも生かされており、アンがノートパソコンでインターネットを参照したり、エジソンがスマホをチェックしていたりと、現代文明の機器が突然登場しては観る者を驚かせる。これには様々な解釈ができるが、おそらく、テスラの先鋭的なビジョンを表現したものだと考えられる。

なぜかノートパソコンやインターネットも登場(『テスラ エジソンが恐れた天才』)
なぜかノートパソコンやインターネットも登場(『テスラ エジソンが恐れた天才』)[c] Nikola Productions, Inc. 2020

もしもこの世に存在していなければ、現代の私たちの暮らしが成り立たないとも言われる二コラ・テスラ。時にマッドサイエンティストとも呼ばれてしまうが、今回紹介した作品を観れば、彼が不器用ながらも科学に真摯に向き合ってきた人物であることがわかるはず。天才であり孤高、一筋縄ではいかない彼のキャラクターが多くの人々を惹きつけるのだろう。

文/サンクレイオ翼

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