「あのキス」の桃地から『いのちの停車場』まで、松坂桃李が魅せる“清らかな情熱”と“父性”
俳優、松坂桃李の進化が止まらない。2021年も映画、ドラマにと八面六臂の活躍ぶりで、週末興行ランキングで初登場1位を飾った『いのちの停車場』(公開中)では、“希望の光”となる青年を親しみやすさと父性と共に好演。観客に温かな余韻を残す役割を担うなど、これまで果敢なチャレンジを重ねてキャリアに磨きをかけてきた彼が、また新たな魅力を発揮している。
『いのちの停車場』は、現役医師であり作家としても活動する南杏子の同名小説を、日本アカデミー賞受賞監督である『八日目の蝉』(11)などの成島出が、吉永小百合主演で映画化した人間ドラマ。金沢にある「まほろば診療所」で在宅医療専門の医師として働く咲和子を中心に、命に向き合う医師や職員、患者とその家族の姿を映しだす。
ヲタクにワイルドな刑事、冴えない主人公も…様々な役を演じる松坂桃李の進化
近年の松坂は、『孤狼の血』(18)では葛藤する若きエリート刑事役、『娼年』(18)では娼夫となった青年役、『新聞記者』(19)では自身の役割に悩む内閣情報調査室の官僚役を演じるなど、数々の注目作で難役とも思える役柄に挑んできた。そんな松坂の2021年は、興味深い役柄での出演作が相次いでいる。
まず2月、劔樹人の自伝的青春コミックエッセイを映画化した『あの頃。』(公開中)では、松坂は「ハロー!プロジェクト」に青春を捧げる主人公の劔に扮し、振りきったオタクぶりとひたむきさを表現して、観客の共感を呼んだ。
また今クールのドラマでは、主演2本を掛け持ちするという大活躍を見せている。「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK総合/毎週土曜21:00~)では、“イケメンだけど中身はスカスカ”と言われる名門大学の広報マン、神崎真役にトライ。次々と降りかかるトラブルにタジタジになる姿で笑いを誘いながら、しっかりと視聴者に問題を提起する役割を担っている。
そして松坂桃李史上“もっともポンコツ”なキャラと称号を与えられたのが、「あのときキスしておけば」(テレビ朝日系/毎週金曜23:15~)で演じる、なにかと不運な32歳の独身男性、桃地のぞむ。本作は桃地が恋に落ちた女性、巴の魂が、見知らぬおじさんと入れ替わってしまう…という衝撃の“入れ替わりラブコメディ”で、松坂は頼りないダメ男ながらも愛さずにはいられない桃地を、なんとも魅力的に演じている。
続いて今夏には、前述した『孤狼の血』の続編、『孤狼の血 LEVEL2』(8月20日公開)が控える。広島の裏社会を治めていた刑事、大上(役所広司)の遺志を受け継いだ日岡役を再演する松坂は、現在放送中のドラマで放っているポンコツオーラをいっさい封印!前作の優等生刑事からワイルドな刑事へと変貌を遂げたことで、鬼気迫る表情を披露してくれそうだ。