千差万別の映像表現が光る!隆盛を極める中国アニメーション、近年の注目作まとめ
中国のCGアニメをリードする制作会社による『白蛇:縁起』
中国四大民間伝説の一つである「白蛇伝」を題材とした現在公開中の『白蛇:縁起』もまた、中国のアニメ制作会社である追光動画が、アメリカのワーナー・ブラザースと共同制作した3DCGアニメーション。中国では2019年に公開されると、日本円にして70億円超の興収を稼ぎだした。
国師の命令により、民間人が蛇を大量捕獲していた晩唐の時代、白蛇の妖怪の白は国師を殺そうとするも失敗に終わってしまう。逃亡の末、記憶をなくしてしまった白は、捕蛇村に住む少年の宣に救われ、記憶を取り戻す冒険の旅へと出発。距離を縮めていくが、その道中、白が白蛇の妖怪ということが明らかになってしまう。
舞台となっている古の中国の壮大な自然や景色など、圧巻のクオリティによる独自の世界観が広がる本作。独特の色使いや水墨画を思わせるエフェクトなど、中国アニメならではの表現を味わうことができる1作だ。追光動画は本作の後に、同じくヒットを記録した『ナタ転生』(20)を生みだすなど、CGアニメを大きくリードする存在となっている。
“中国史上初の大人向けアニメ”『DAHUFA 守護者と謎の豆人間』
最後にバイオレンス描写という点で注目の作品が、公開中の『DAHUFA 守護者と謎の豆人間』だ。レイティング制度がない中国映画界だが、本作は制作側が13歳未満の鑑賞を控えるように自主規制を呼びかけたアニメとして大きな話題を呼び、中国で13.5億円を稼ぎだすスマッシュヒットとなった。
王宮から失踪した皇太子を捜すため、国境を越え、とある謎の村に到着した国の守護者ダフファー。見た目が皆そっくりなうえに、自らの意志を持たず、なにもしゃべらない…という村の住民たちが不気味な気配を漂わせるなか、やがてダフファーは村に隠された秘密へと近づいていく。
人のような奇妙な生き物たちの首が次々と切り落とされたり、銃で蜂の巣にされたりする暴力的な描写に加え、謎の生き物たちが自分の目を顔から剝ぐといったショッキングな映像のオンパレード。物語も、支配者と村の関係が階級社会への皮肉として盛り込まれるなど、大人向けな1作だ。
これら以外にも、どこかスタジオジブリ作品のような絵のタッチが特徴的な『紅き大魚の伝説』(16)といった、日本のアニメの影響を大きく感じさせるような作品も多く、その表現の幅の豊かさが、業界の規模の大きさを感じさせる中国アニメーション。今後もどんな作品が誕生するのか目が離せない。
文/サンクレイオ翼