骨太サスペンスの名手、テイラー・シェリダン…『ボーダーライン』から『モンタナの目撃者』へ続くその手腕に迫る!
雄大なロケーションをバックにダイナミックなアクションシーンにも注目!
“フロンティア3部作”よりもはるかにスケールアップを遂げたシェリダンの最新作『モンタナの目撃者』は、やはり魅力的なストーリーとキャラクターに引き込まれる作品だ。モンタナ州の山奥で森林消防隊員のハンナがめぐり会ったのは、冷酷非情な2人組の殺し屋に父親を殺害され、命からがら逃亡中の少年コナー。ハンナはコナーを保護するが、折しも現地で未曾有の森林火災が発生する。はたしてハンナは容赦なく燃え広がる大自然の脅威と、ひたひたと迫り来る殺し屋たちからコナーを守り、戦い抜くことができるのか…。
かつて職務中に壮絶な事件を“目撃”したことで癒やしようのないトラウマを負ったハンナと、唯一の肉親である父親の命を目の前で奪われたコナー。くしくも共に悲劇の“目撃者”である2人のキャラクターを映画の中心に据えたシェリダンは、ハンナとコナーが八方塞がりの極限状況のなかで決死のサバイバルを繰り広げ、かけがえのない絆で結ばれていく姿を映しだす。
さらに、モンタナの代替ロケ地であるニューメキシコの雄大なロケーションを余すところなくカメラに収め、森にそびえ立つ監視塔などを活用したダイナミックなアクションシーンを映像化した。ドラマとスペクタクルをがっちりと融合させ、映画に熱き血を通わせたシェリダンの演出力に目を見張らずにいられない。
森林消防隊員という特殊な職業を演じるにあたって、「木を切り、火をおこす方法から教わった」と語るジョリーの渾身の熱演からも目が離せない。ひたすらタフで強い女性ではなく、あえて内面に弱さ、もろさを抱えたキャラクターに扮した彼女が、苦しみからの再生や贖罪といったテーマを人間味豊かに体現する。いまやハリウッドで引っ張りだこの気鋭監督シェリダンとの初のコラボレーションは、2000年代にアクション・ヒロインのアイコンとなったスター女優の輝かしいキャリアに新たなる到達点をもたらしたのだ。
文/高橋諭治