オスカー受賞作『アナザーラウンド』で知る、デンマークの驚きの飲酒事情
ヨーロッパや北欧、アフリカ大陸などで製作された映画たちは、ハリウッド大作と比べると多くの観客に観られる機会に恵まれているとは言えない。その国ならではの風習やトリビアを知れば、もっと映画を楽しめるはず。世界各国の良作映画をピックアップする企画で今回取り上げるのは、デンマークが舞台のデンマーク語による正真正銘のデンマーク映画『アナザーラウンド』(9月3日公開)だ。
本作は“北欧の至宝”と称されるデンマークの名優、マッツ・ミケルセンがカンヌ国際映画祭男優賞に輝いた『偽りなき者』(12)に続いて、再びトマス・ヴィンターベア監督とタッグを組んだ最新作で、今年の4月末に行われた第93回アカデミー賞授賞式で国際長編映画賞に輝いた。冴えない高校教師のマーティン(ミケルセン)とその同僚で親友の3人が、「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと仕事もプライベートもうまくいく」という理論を証明しようと自らが被検体となって実験する姿を、ユーモラスかつビターに描いていく。
16歳でも飲酒OK!?日本では考えられないデンマークのアルコール事情
まずはデンマークのアルコール事情から簡単に説明しておこう。実はデンマークの法律に飲酒に関する年齢制限はないというから驚きだ。さらに、ビール、ワインといったアルコール度数16.5%以下の酒類なら16歳から店頭で購入でき、18歳になればどんなお酒も買えるようになるだけでなく、レストランやバーで飲酒することも許されている。また、物価が日本の倍はすると言われるデンマークだが、酒の値段は安く、ペットボトルの水より安いビールも存在するほど。
そのような背景もあり、デンマークには酒好きが多いと言われ、10代の頃から酒に親しみながら大人になっていくようだ。劇中でもマーティンに「1週間の飲酒量は?」と聞かれた教え子が、「週に3~5日で、多ければ合計で50~55杯」と回答している。授業中に教師が生徒に飲酒について質問していることにも驚きだが、その量が半端ないところも、さすが“ヴァイキングの国”と言ったところ。
デンマークの酒と言えば、ビールブランド「カールスバーグ」が日本でも定番化しているが、劇中では様々な酒類が登場する。仲間の誕生日を祝うために集まったマーティンらは、シャンパンにウォッカ、ワインを堪能し、マーティンも授業前に(!)ウイスキーなどを流し込み。自宅でも、寝起きから冷やしたウォッカを炭酸水と氷で割ってぐびぐび。さらに、バーボンや苦味酒ペイショーズビターズを使って、“世界最古のカクテル”とも言われている強烈な「サゼラック」を作り、皆でがぶ飲みするシーンも登場する。酒好きの国らしく、ラインナップが豊富なのも本作の見どころの1つだ。