西島秀俊×アピチャッポン・ウィーラセタクンが熱く語り合う!「私たちには生きる証として映画が必要」

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西島秀俊×アピチャッポン・ウィーラセタクンが熱く語り合う!「私たちには生きる証として映画が必要」

「コロンビアになんとも言えない繋がりを感じた」(ウィーラセタクン)

西島「『フィーバー・ルーム』(ウィーラセタクン監督が手掛けた舞台作品)があったじゃないですか。あれが凄まじくてとても驚いたのですが、あの音と光の表現があり、今回の『MEMORIA メモリア』では静寂の音や神聖な感じがより強まっていて。アピチャッポン監督は次の段階に行ったのかなと思いました。今回はコロンビアで撮られたということでその理由と、タイの森には『トロピカル・マラディ』のような精霊が宿っていると感じましたが、コロンビアの森に監督はなにを感じたのか教えてください」

コロンビアで新作『MEMORIA メモリア』を手掛けたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督
コロンビアで新作『MEMORIA メモリア』を手掛けたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督[c]Kick the Machine

ウィーラセタクン「『光りの墓』を撮った後、タイは当時政治的に混乱している時期で多くの課題があり、また私自身にも影響がありました。そんな時に訪れたコロンビアになんとも言えない繋がりを感じたのです。コロンビアというとアマゾンのイメージを持たれると思います。でもいざ行ってみると、もっと町並みの部分に強く魅了されたのです。そこで一度映画づくりを改めて勉強してみようと思いました。結果的には自分の世界の見え方からは離れられないと感じました。新しい冒険であっても、いままで通り皆さんや友だちのために映画を作っている、その続きを、ただ別の場所でやった感じです」

西島「監督はずっと、記憶と夢をテーマにしていらっしゃって、今回の作品ではそれがよりはっきりと出ていると感じました。また眠りと死の違いも考えさせられました。そうしたテーマをずっと追い続けていますよね?」

ウィーラセタクン「そうです。私はいつも映画と夢とを繋げます。なぜ夢を見るのか、なぜ映画を見るのか、なぜフィクションが必要なのか。それは生体的なニーズだと私は思っています。暗闇で光を見たい、脳が情報を処理したい、共感したいという気持ちや、あるいは他の自分を演じたいという気持ち。夢を見るときも意識が離れ、世界とつながることができる。そして生体的なものである以上、死は避けては通れません。この1年で多くの方が亡くなり、死と映画を繋げる必要が出てきました。私たちには生きる証として映画が必要なのです。それはこれまでやってきたことと変わりありません。生きてきた証を、今後も追求していきたいと思っています」

「秀俊さん、僕たちの夢を実現しようじゃありませんか」(ウィーラセタクン)

『MEMORIA メモリア』は第74回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞している
『MEMORIA メモリア』は第74回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞している[c]Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF/Arte and Pian

西島「今後もタイ以外の場所で撮影をする予定はあるのでしょうか?」

ウィーラセタクン「次の作品はまた南米で撮ろうと考えています。ただタイでも仕事を続けていきたい。特に現在の若い人たちの民主化への行動に関心を持っていますから。でも秀俊さん、そろそろ僕たちの夢を実現しようじゃありませんか。『MEMORIA メモリア』のティルダさんも一緒に仕事をしようと約束してから時間が経った。それはお互いにとって異国が必要だったからです。私たちが異邦人になる必要がある。同じことを秀俊さんとも感じます。日本ではない、タイではないどこか、いまそれを探し求める旅をつづけていますよ」


西島「是非是非。以前『トロピカル・マラディ』の頃だったか、監督とお会いした時に僕で映画の企画を考えていると仰っていたのが、全編雪原で、全編全裸というとんでもない企画でしたね(笑)。でもキツいな、僕もう50歳なんで(笑)」

ウィーラセタクン「あの映画はずっとやりたいと思っています。課題はお金がかかることで、あとは撮影が本当になにもない場所じゃないといけないことです。大丈夫です、まだできると思いますよ(笑)」


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