「イカゲーム」の快挙、SFへの進出…昨今の韓国コンテンツの流れから見えてくる2022年の注目作は?
「イカゲーム」がNetflix史上最大のヒット作として世界的な社会現象を巻き起こした2021年。前年の「愛の不時着」&「梨泰院クラス」を悠々と超えるその過熱ぶりは、韓流コンテンツの実力が一過性のものではないことを知らしめた。『パラサイト 半地下の家族』(19)以降、世界中から熱い視線を集めるまでに至った韓国の映画とドラマ。昨今の潮流を振り返りつつ、今年の注目作を紹介していきたい。
映画界の人材のドラマへの進出、ヒットを連発するウェブトゥーン原作
2021年の韓国コンテンツで最も注目を集めたのが、配信開始1か月で1億4200万世帯が視聴した「イカゲーム」だ。ハロウィンの頃には多くのセレブたちが作品のコスプレを披露。アメリカの学校では「イカゲーム」のコスプレ禁止令まで敷かれたほどで、韓国に限定せず、世界の作品のなかでも主役と言うべきセンセーショナルを巻き起こした。
多額の借金を抱えたプレイヤーたちによる大金を懸けたデスゲームが題材の本作は、話題性はもちろん中身も高く評価され、ゴールデングローブ賞ではドラマ作品賞、主演男優賞(ドラマ部門)、助演男優賞の3部門でノミネート。そしてオ・ヨンスが助演男優賞を韓国人俳優として初めて受賞した。
このヒット&高評価の要因の一つが、映画界で活躍している才能が顔をそろえたことだろう。メガホンを握ったのは『トガニ 幼き瞳の告発』(11)で、ろうあ者福祉施設の闇に切り込んだ一方、『怪しい彼女』(14)ではエンタメ色の強い作品を作り上げたファン・ドンヒョク監督。「イカゲーム」でも韓国における格差社会を背景にしたデスゲームという、社会のグロテスクな面を残酷かつスリリングに描いてみせた。
さらに俳優陣では、借金まみれのダメ親父の主人公を演じ、新境地を開拓したイ・ジョンジェをはじめ、主人公がゲームに参加するきっかけをつくる謎のメンコ男にコン・ユ、さらにはイ・ビョンホンと現在の韓国映画界を牽引するビッグネームが名を連ね、作品にクオリティをもたらした。
海を越えて日本の三池崇史が「Connect(英題)」を手掛けることが決まっていたりと、「イカゲーム」に限らず韓国のドラマ業界では、映画界の人材を起用する動きが多く見られる。Netflixオリジナルドラマ「地獄が呼んでいる」もまた、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)などで知られるヨン・サンホが監督、さらに『バーニング 劇場版』(18)のユ・アインが主演を務め、こちらも配信されるや否や初登場世界1位を獲得する大ヒットとなった。
この「地獄が呼んでいる」のもう一つの大きなポイントが、“ウェブトゥーン”と呼ばれるWEB漫画を原作としていること。原作者はヨン・サンホ監督自身だ。韓国では2010年代からケーブルテレビ局が台頭したことにより、コンテンツの激戦化が始まり、「梨泰院クラス」など、それまでのドラマと一線を画すウェブトゥーンを原作としたユニークなドラマが急増&ヒットを飛ばしている。2021年も「ナビレラ-それでも蝶は舞う-」や「わかっていても」といった多くのウェブトーゥン原作ドラマが生みだされた。
ウェブトゥーン原作ものは、奇抜かつ地上波では放送できないような過激な内容の作品も多い。実際「地獄が呼んでいる」も、不可解な存在に地獄行きを宣告された人々が、正体不明のゴリラのような怪物によって残酷に殺され、混乱に陥るというダークかつファンタジックなストーリーが展開する。
一見、安っぽくなってしまいそうな突飛な世界観だが、十分な資金を費やし、さらに容赦のない過激なシーンを盛り込むことで、原作の魅力を映像面から丁寧かつハイクオリティに実写化。これはNetflix作品だけでなく、ケーブル局制作のコンテンツにも言えることで、それゆえに世界で勝負できる作品が次々と生まれている。
一方、近年停滞気味なのが地上波のドラマ。その原因の一つが、放送法で中間広告を入れられないことやケーブル局の台頭により、広告収入がグッと落ち込んでしまったこと。そんな状況を解消するため、昨年7月には中間広告が解禁される動きも。これにより制作の現場や作品にどのような影響が出るのか?今後の動きに注目したい。