女性同士の連帯感ってやっぱり素敵。ジェシカ・チャステインが主演&プロデュースしたスパイ・アクション『355』
映画界における女性の地位向上に向けてメッセージを発信
思い起こせばチャステインは、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた『ヘルプ 心がつなぐストーリー』(11)、さらに鬼才テレンス・マリックによって主要キャストに大抜擢された『ツリー・オブ・ライフ』(11)、同じく11年製作の『テイク・シェルター』『英雄の証明』『キリング・フィールズ 失踪地帯』の5作品すべてが賞レースに絡んだことからも、まさに彗星のごとく現れた印象が強い(日本劇場未公開作『ペイド・バック』でも複数の賞を受賞している)。
その翌年、『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)で再びアカデミー賞、今度は主演女優賞にノミネートされて以降の快進撃は、誰もが知る通りだろう。いまでは賞レースに絡んでくる常連俳優である。なるほど、頭角を現すべくして現した才能の持ち主だと非常に納得させられる。
だが、そんな立ち位置には留まらず、2016年にはNYを拠点にしたフレクル・フィルムズを設立し、プロデュース業に乗りだす。それ以前にも、2篇から成る恋愛映画『ラブストーリーズ コナーの涙』『ラブストーリーズ エリナーの愛情』(共に13)でも主演と製作を務めており、かなり早い時点で出演作との関わり方や作品選びに対し、非常に自覚的で高い意識を持っていたことがうかがえる。
と同時に、映画界における女性の地位向上に対しても積極的に働きかけてきた。例えば『女神の見えざる手』(16)や、『モリーズ・ゲーム』『ユダヤ人を掬った動物園 アントニーナが愛した命』(共に17)などに関して、“強い女性を演じさせたら右に出る者ナシ”といった賞賛を受けたことに対しても、「それは女性=弱い、男性=強いという既成概念に基づく評価だ」と、世間一般の無自覚な思い込みや偏見を突いてみせた。そんな知的な彼女が、これまで以上に製作過程に深く関わり、情熱を注いだのが、この『355』なのである。