女性同士の連帯感ってやっぱり素敵。ジェシカ・チャステインが主演&プロデュースしたスパイ・アクション『355』
“世界の平和、人々の幸せ、人命の尊重”を本能的に選び取って共闘する女性スパイたち
さて、その内容は――。世界中のあらゆるインフラや金融システムを、“攻撃可能にするデジタル・デバイス”が開発される。その危険なテクノロジーを手に入れようとする犯行グループと、各国の諜報機関が入り乱れ、追いつ追われつの世界を股にかけた攻防戦が繰り広げられる。CIA、MI6、BNG(ドイツ連邦情報局)、中国政府のエージェント、ひょんなことで巻き込まれたコロンビア諜報機関の心理学者。5人は最初ライバル的な形で出会うのだが、目的を一つにする者同士としてしだいに協力し、最後は一致団結して悪に立ち向かう。
その展開が、なんとも痛快だ。あくまで“組織”に忠実な(旧来の典型的な)男性とは異なり、組織内の自分の立場より“世界の平和、人々の幸せ、人命の尊重”を本能的に選び取って連帯し、共闘していく女性スパイたちの活躍に、ところどころツッコミどころはありつつも、興奮せずにいられない!もちろんアクションシーンも華麗で迫力満点。ゴリゴリの肉弾戦だけでなく、小物やアイデアを生かしたしなやかな戦闘に目を奪われる。そして黒幕やそこへたどり着くまでの展開にも、男たちが都合よく作り上げて来た社会的な「膿」構造や驕りへの皮肉も漂っている。
実在した正体不明の女性スパイのコードネーム“355”がタイトルに
ちなみにタイトルに付けられた“355”とは、アメリカ独立戦争におけるワシントンの諜報機関で中枢的役割を果たしながら、いまだその正体が謎のままである実在の女性スパイを指すコードネーム。チャステイン曰く、「このタイトルは、認識されていない女性たちに対する敬意なのです。彼女たちのパワー、強さ、達成したことを詳しく説明し、“ありがとう”と言っているのです」。
タイトル同様、本作には、「女性たちが映画界で過去にどのように扱われてきたか、脅かされ続けているかについて、いつも声を上げてきました」と語るチャステインの熱い思いが込められている。そう、ラストで快哉したくなる本作は、きっと“映画が牽引し、誰もが住みよい世界に変えよう”という決意の宣言でもあるのだ。
文/折田千鶴子