批評家が選ぶ、サーチライト作品ランキング!“フレッシュ”なおすすめ20選
良作の宝庫といわれるサーチライトだけあって、20作品以上を挙げてもすべてが90%フレッシュ以上を獲得する安定感。どれを観てもハズレがないことを証明する結果に。そのなかでも最も高いスコアを獲得したのは、2021年にサンダンス映画祭で審査員賞大賞(ドキュメンタリー部門)と観客賞を受賞したドキュメンタリー映画『サマー・オブ・ソウル (あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』。5度のグラミー賞に輝くクエストラブが初めて監督を務め、50年間封印されていた音楽フェスの模様を映しだす。
ウッドストック・フェスティバルと同じ1969年の夏に、30万人以上が参加したハーレム・カルチュラル・フェスティバル。出演したアーティストはスティーヴィー・ワンダーやゴスペルの女王マへリア・ジャクソンやメイヴィス・ステイプルズ、当時人気絶頂だったスライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン。そしてニーナ・シモン。撮影されたまま誰に目にも留まることなく眠りつづけていた貴重な映像がよみがえったという、記録映画の真髄を味わえるバックグラウンドと圧巻のパフォーマンスの数々。音楽に詳しくない人でも心震えることだろう。
劇映画で最も高いスコアとなったのは98%フレッシュを獲得した2作品。『ある女流作家の罪と罰』は、かつてベストセラー作家だった女性が落ちぶれた生活から抜けだすために著名人の手紙を偽造する姿を描いた実話を基にした物語。主演を務めたのはコメディ作品の印象が強いメリッサ・マッカーシーで、新境地を開拓した彼女はアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。そしてもう一本、『レスラー』はヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した珠玉のドラマ。ミッキー・ロークが華麗な復活を遂げ、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたことも公開当時大きな話題を集めていた作品だ。
その2作品に代表されるように、やはり各年の賞レースを盛り上げたタイトルが数多く並ぶ。前述したアカデミー賞作品賞受賞作の5作品はもちろんのこと、作品賞にノミネートされた作品は97%フレッシュの『ブルックリン』と『サイドウェイ』、96%フレッシュの『フル・モンティ』、94%フレッシュの『JUNO/ジュノ』、93%フレッシュの『女王陛下のお気に入り』と『127時間』、92%フレッシュの『グランド・ブダペスト・ホテル』、91%フレッシュの『リトル・ミス・サンシャイン』の8作品。
サーチライト作品初の賞レース参戦を飾った『フル・モンティ』の功績も見逃せないが、やはりサーチライトの存在感を世界中に示し、その人気を不動のものにしたのは『リトル・ミス・サンシャイン』であろう。毎年多くのインディペンデント映画が発掘されるサンダンス国際映画祭で、当時史上最高額の1000万ドルで全世界配給権が買い付けられた同作は、日本でもスマッシュヒットを記録したハートウォーミングなコメディだ。
ぽっちゃり体型の9歳の女の子オリーヴが美少女コンテストに出場するチャンスを得たことをきっかけに、それぞれ問題を抱えて崩壊寸前の個性的ファミリーがマイクロバスに乗り込み会場となるカリフォルニアを目指して旅に出る姿を描く、脚本のマイケル・アーントは、その後『トイ・ストーリー3』(11)や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)など大作映画に次々と抜擢。またメガホンをとったジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリスはその後も『ルビー・スパークス』(12)と『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(17)の2作品をサーチライトで手掛けている。
このように優れたインディペンデント系作家をメジャー作品へと導く役割を果たしたり、何度もタッグを組みながら育てあげたりしていくのもサーチライトの特徴のひとつ。92%フレッシュを獲得した『グランド・ブダペスト・ホテル』のウェス・アンダーソン監督も、『ダージリン急行』(07)を皮切りに『犬ヶ島』(18)や『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(公開中)もサーチライトで製作。
また同じく92%フレッシュの『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ監督も、オスカー受賞後最初の作品となる『ナイトメア・アリー』(3月25日公開)でサーチライトと再タッグを組み、94%フレッシュの『JUNO/ジュノ』のジェイソン・ライトマン監督はサーチライト作品で注目を集め、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2月4日公開)を手掛けるまでに成長。魅力的な作品に出逢ったら、その監督にも注目してみるというのも、サーチライト作品の楽しみ方であろう。
文/久保田 和馬