スピルバーグが映画化した意義も見えてくる!「トゥナイト」「マリア」「アメリカ」…『ウエスト・サイド・ストーリー』を彩る名曲を解説

コラム

スピルバーグが映画化した意義も見えてくる!「トゥナイト」「マリア」「アメリカ」…『ウエスト・サイド・ストーリー』を彩る名曲を解説

つい先日ノミネーションが発表された第94回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、助演女優賞を含む7部門で候補となり話題を呼んでいる、スティーヴン・スピルバーグの最新作『ウエスト・サイド・ストーリー』(2月11日公開)。本作は1957年に初演されて大ヒットした伝説的なブロードウェイ・ミュージカルの映画化だ。1950年代のニューヨークを舞台にして、“ジェッツ”と“シャークス”というグループに分かれて敵対する若者たち。そのなかで、激しい恋に落ちた若き男女の姿がドラマチックに描かれ、名曲の数々が新曲のように新鮮に楽しめる。

ジェッツとシャークスのメンバーがダンスバトルを繰り広げるダンス大会のシーンは圧巻!
ジェッツとシャークスのメンバーがダンスバトルを繰り広げるダンス大会のシーンは圧巻![c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

巨匠レナード・バーンスタイン&スティーヴン・ソンドハイムのタッグで生みだされた現在も色褪せない名曲たち

本作を彩る全曲の作曲を手掛けているのは、ブロードウェイで初演された当時、アメリカが生んだクラシック界の新星として注目を集めていたレナード・バーンスタイン。歌詞を手掛けたのは、ミュージカルの世界で成功することを夢見ていた駆け出しの音楽家、スティーヴン・ソンドハイムだ。のちにアメリカ音楽界の重鎮となるバーンスタインとソンドハイムだが、当時は若手として血気盛ん。「なにか新しいことをやろう!」という情熱が、『ウエスト・サイド・ストーリー』の楽曲からも伝わってくる。

そして今回、映画で歌と演技を披露するのは、3万人のオーディションから選ばれた新星、レイチェル・ゼグラーと『ベイビー・ドライバー』(17)で知られるアンセル・エルゴートだ。同じブロードウェイの舞台を1961年に初めて映画化した『ウエスト・サイド物語』では、歌のパートは吹替えだったが、今回はキャスト自身が歌っているのも注目したいところ。ゼグラーは第79回ゴールデン・グローブ賞で主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門)に輝いた実力の持ち主だ。

【写真を見る】アンセル・エルゴートと新星レイチェル・ゼグラーの共演で、少年たちのグループ抗争に翻弄される恋人たちの“禁断の愛”を描く
【写真を見る】アンセル・エルゴートと新星レイチェル・ゼグラーの共演で、少年たちのグループ抗争に翻弄される恋人たちの“禁断の愛”を描く[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

トニーとマリアのまっすぐな恋心を綴った「トゥナイト」や「マリア」

『ウエスト・サイド・ストーリー』の曲で最も有名なのは、トニー(エルゴート)とマリア(ゼグラー)がバルコニーでデュエットする「トゥナイト」だろう。転調を繰り返すメロディが恋人たちの胸の高まりを表し、ぴったりと寄り添ったハーモニーからは2人が惹かれ合っていることが伝わってくる。当初、このシーンでは「ワン・ハンド、ワン・ハート」という別の楽曲が使用される予定だったが、シーンの雰囲気に合わないということで「ワン・ハンド、ワン・ハート」は2人が結婚式の真似事をするシーンに変更。バーンスタインは映画の後半に流れる「トゥナイト(クインテット)」のメロディの一つを発展させて「トゥナイト」を作り上げた。「ワン・ハンド、ワン・ハート」がバルコニーのシーンで使われていたら、この名曲は生まれなかったのだ。


元ジェッツのリーダーで、いまは更生してドラッグストアで働くトニー
元ジェッツのリーダーで、いまは更生してドラッグストアで働くトニー[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

その「トゥナイト」と並んで『ウエスト・サイド・ストーリー』を代表するラブソングが「マリア」だ。ダンス大会でマリアと出会って恋に落ちたトニーが、夜の街を歩きながらマリアのことを想って歌う。オペラ風のこの曲は音域が広いため、舞台ではミュージカル俳優がうまく歌えず大変だったとか。そんな難しい曲をエルゴートが力強く熱唱。この曲はアンドレア・ボチェッリやプラシド・ドミンゴといったオペラ歌手が演目に取り入れたほか、マーヴィン・ゲイやサラ・ヴォーンなどジャンルを越えて様々なシンガーがカヴァーしてきたことでも有名だ。

シャークスのリーダーの妹で、夢と希望を胸にニューヨークでの生活を楽しんでいるマリア
シャークスのリーダーの妹で、夢と希望を胸にニューヨークでの生活を楽しんでいるマリア[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.



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