山田涼介が明かす『大怪獣のあとしまつ』の撮影秘話。「ふざけたい気持ちをグッとこらえ、凛々しい男を演じました」
松竹と東映が初タッグを組み、誰もが知る“巨大怪獣”の誰も知らない“死んだあと”を描く映画『大怪獣のあとしまつ』(公開中)で、怪獣の死骸の処理を任され、無理難題に立ち向かう主人公を演じた山田涼介。これまでにない、まったく新しい切り口の特撮映画となるが、想像力を膨らませて挑む怪獣相手の芝居にも思いきりぶつかることができたという。経験を積み重ねることの大切さを実感すると共に「僕の俳優人生にとっても必要な1作になった」という本作への想いや、自身の憧れの人までを語ってもらった。
「アラタとしてブレずに、1本芯を通して生き抜こう」
本作は、「倒された怪獣の死体処理はどうするのか?」という新たな視点で怪獣を見つめる空想特撮エンタテインメント。河川の上に横たわる巨大な死体は腐敗が進み、ガス爆発の危機が迫っていることが判明。しかし首相や大臣らは前代未聞の難問を前に、不毛な議論を重ね右往左往するばかり。絶望的な時間との闘いのなか、首相直轄組織・特務隊の隊員である帯刀アラタは大怪獣の死体処理の任務を与えられ、極秘ミッションに挑むことになる。監督・脚本は「時効警察」シリーズなどで知られる三木聡が務めた。
アラタ役に抜てきされた山田は「僕の俳優人生はこれからも続いていくと思うんですが、そのなかで必要な1作品になるんじゃないか」という予感とともに本作に飛び込んだという。そう思わせてくれたのは「本作は、この角度から攻めたことはなかったなという変化球のストーリーで、怪獣やそれを取り巻く人々を描いている。台本を読ませていただいて、単純に『おもしろいな!』と思いましたし、これを三木監督が撮るとしたら絶対におもしろいことになるだろうと感じました」と語るとおり、脚本と監督の相性のよさだという。
そしてアラタという、キリリとした表情でミッションに立ち向かう頼れる男という役柄も、山田にとっては新鮮なものだった様子。アラタと周囲の個性的なキャラクターがどう交わっていくのかにも興味が湧いたとのことで、「ドラマなどでコメディ作品に出演させていただいたことはありますが、“僕は一切ふざけていないけれど、状況がものすごくふざけている”という作品はいままでやったことがなくて。素直に、お客さんとしてこの作品を観てみたいなと思いました。アラタはとてもまじめな青年だけれど、周りがものすごくふざけてくれる(笑)。アラタを演じるうえではまじめな特務隊員としてブレずに、1本芯を通して生き抜こうと強く思っていました」と語った。
西田敏行やふせえりらベテラン勢もコミカルな表情をたっぷりと見せてくれるが、「アラタはふざけられない。周りがすごく楽しそうで乗っかりたい気持ちもありましたが、そこをグッとこらえて凛々しい男を演じました」と微笑む。
「本当に怪獣がいるかのように想像できる、特殊能力があります(笑)」
劇中には最全長380m、全高155mにおよぶ、邦画史上最大級の怪獣が登場。アラタは怪獣の死体の上を歩いて調査をしたり、思わぬアクシンデントに見舞われたりと、怪獣相手に奮闘する。大怪獣の造形は、「平成ゴジラ」シリーズや「ウルトラマン」シリーズなど数々の怪獣造形で知られる若狭新一が手掛けている。
大規模なVFX撮影やグリーンバック撮影、ワイヤーに吊られてのアクションにも挑んだ山田。『暗殺教室』(15)や『鋼の錬金術師』(17)などに出演してきたこともあって、「これまでもVFXを使った作品に携わらせていただくことが多かったので、『怪獣の大きさはこれくらいで、目線はこれくらい』と言われたら、なんとなく想像することができる。特殊能力を持っているんです」とにっこり。「初めてこういった特殊な撮影をした時は戸惑いましたが、これだけは経験しないと身につかないこと。改めて、経験って大事なんだなと思いました」と継続の重みを噛み締める。
怪獣の死体によじ登るシーンについては「怪獣の表皮ってこういう感じなんだ~と思いながら“よじよじ”って登っていました」と楽しそうに笑いつつ、「怪獣映画に自分が携われるとは思っていませんでした。そういった驚きはありましたが、今回は特に怪獣が死んでしまっていますから!死んでいる怪獣相手の怪獣映画という点でも、なかなかできない経験です。小さなころには特撮ものも観ていましたが、また一風違った特撮作品が生まれる時代が来たんだなと感じました。内容としてもパンデミックを想起させるところもあり、奇しくもいまの時代にマッチしている。乗り越えなければいけない問題に直面しているいま、誰もが決して他人事には思えない作品になっていると思います」と力を込める。