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黒澤明の『生きる』リメイクや日本ロケ作品…今年のサンダンスに集った“日本関連作品”たち

コラム

黒澤明の『生きる』リメイクや日本ロケ作品…今年のサンダンスに集った“日本関連作品”たち

恋愛モノの約束を覆したホラー『Fresh』は、アダム・マッケイがプロディーサーを務めている
恋愛モノの約束を覆したホラー『Fresh』は、アダム・マッケイがプロディーサーを務めているCourtesy of Sundance Institute.

アメリカおよび世界のインディペンデント映画の登竜門として、新しい才能をピックアップする場所であるサンダンス映画祭は、各配給会社、配信業者が新作を購入する場でもある。観客賞受賞作の『Cha Cha Real Smooth』はApple TV+が購入している。サーチライト・ピクチャーズは、「ふつうの人々」に主演したデイジー・エドガー=ジョーンズと、『キャプテン・アメリカ』シリーズのウィンター・ソルジャー役で知られるセバスチャン・スタンが主演するホラー作品『Fresh』や、エマ・トンプソン主演のセックス・コメディ『Good Luck to You, Leo Grande』を購入し、2作品とも北米ではHuluで配信される。ダコタ・ジョンソンとソノヤ・ミズノ主演の友情物語『Am I OK?』はHBO Max、アフリカから奴隷として渡った最後の船に乗っていた人々の子孫を追った『Descendant』は、バラク・オバマ元大統領夫妻の制作会社ハイヤー・グラウンドがNetflixと共同で配給する。

長崎県にある普賢岳の噴火活動で亡くなったフランス人火山研究家のドキュメンタリー『Fire of Love』
長崎県にある普賢岳の噴火活動で亡くなったフランス人火山研究家のドキュメンタリー『Fire of Love』Courtesy of Sundance Institute.


今年のサンダンスで、おもしろい傾向がある。日本の作品や日本人監督作品はないのに、日本に関連する作品がとても多いことだ。ブラッドリー・ラスト・グレイ監督の『blood』は、日本ロケ作品であり、コゴナダ監督のA24作品である『アフター・ヤン』(2022年公開予定)では、音楽をASKA(アスカ・マツミヤ)が手掛け、坂本龍一や小林武史、Mitskiが参加している。黒澤明監督の『生きる』(52)をビル・ナイ主演で英国リメイクしたオリバー・ハーマナス監督の『Living』、普賢岳噴火の火災で亡くなったフランス人火山研究家を描いたサラ・ドーサ監督のドキュメンタリー『Fire of Love』、米系韓国人の冤罪を訴え無罪を勝ち取った米系日系人らのグループのドキュメンタリーであるスー・キム監督『Free Chol Soo Lee』、そして出品が予定されていたミシェル・アザナヴィシウス監督の『カメラを止めるな!』仏語リメイクである『Final Cut』など、日本の姿はなくても、どこかに日本の影を感じる作品が多く揃っていた。

純粋な日本映画が出品されていたのは、2019年に審査員特別賞・オリジナリティ賞を受賞した長久允監督の『ウィーアーリトルゾンビーズ』(19)まで遡る。この“日本周辺ブーム”は、サンダンスが扉を大きく広げて待ちかまえている現れなのではないだろうか。そろそろ日本からもサンダンスに挑戦する作品が出てくることを願う。

文/平井伊都子

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