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「電脳コイル」から受け継ぐDNA、磯光雄が「地球外少年少女」で再び描く“子ども×近未来”

コラム

「電脳コイル」から受け継ぐDNA、磯光雄が「地球外少年少女」で再び描く“子ども×近未来”

より新しく、さらに舞台を広げた「地球外少年少女」

主人公の登矢(声:藤原夏海)は、地球に住むことを頑なに拒んでいた(「地球外少年少女」)
主人公の登矢(声:藤原夏海)は、地球に住むことを頑なに拒んでいた(「地球外少年少女」)[c]MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

そんな「電脳コイル」の大ヒットから15年後の今年。磯の2作目の監督作として作られたのが「地球外少年少女」だ。

“ARがある暮らし”を描いた「電脳コイル」に対し、本作のテーマは“AIがある宇宙での暮らし”。舞台は2045年の近未来。宇宙空間にある日本製の商業用ステーションで大規模な事故が発生し、子どもたちがそこに取り残されてしまう。取り残された子どもたちは、ネットの切断、空気の漏洩問題、マイクロマシンの暴走など、様々な問題に立ち向かいながら生存と脱出を目指す。さらに後編となる第4~6話ではAIについてより踏み込んだ物語が展開され、本作のテーマが深掘りされていく。

キャンペーンで宇宙ステーション「あんしん」に招待された美衣奈(左/声:赤崎千夏)と弟の博士(右/声:小林由美子)(「地球外少年少女」)
キャンペーンで宇宙ステーション「あんしん」に招待された美衣奈(左/声:赤崎千夏)と弟の博士(右/声:小林由美子)(「地球外少年少女」)[c]MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

宇宙空間での事故から始まる緊張感のある展開、ドローンやAIにまつわるリアリティのある設定が満載。要所要所で挟まるくすっと笑える会話や小ネタ、マスコットキャラのゆるいデザインなど、「電脳コイル」が好きならきっと刺さるであろうポイントも多数存在する。


また、キャラクターデザインを担当したのは「交響詩篇エウレカセブン」や「ガンダム Gのレコンギスタ」のキャラクターをデザインした吉田健一。メインアニメーターに「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」「魔女の宅急便」などに原画として参加し、「電脳コイル」では総作画監督を務めたスーパーアニメーター、井上俊之氏を起用するなど、作画面でも圧倒的なクオリティを実現。“SFは堅苦しい”と敬遠しがちな人にとっても気軽に楽しめるのはうれしいポイントだ。

磯光雄監督作に共通する“子ども×近未来”というテーマ

登矢と心葉が、地球への移住のためリハビリを行う宇宙ステーション「あんしん」(「地球外少年少女」)
登矢と心葉が、地球への移住のためリハビリを行う宇宙ステーション「あんしん」(「地球外少年少女」)[c]MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

冒頭でも書いたように、磯が監督した「電脳コイル」と「地球外少年少女」には、“子ども×近未来”という大きなテーマが共通している。主人公は個性豊かな少年少女。どちらの作品でもその時代に適応した子どもたちが持つ無限の未来や想像力、純粋な想いの力といったものを感じさせてくれる。子どもが観れば同世代の主人公たちに憧れを抱き、大人が観れば自分の子ども時代に想いを馳せられる。だからこそ子どもから大人まで、幅広く愛される作品となったのだろう。

フォロワー1億人という目標を掲げキャンペーンに参加する美衣奈。いつでも配信を行っている(「地球外少年少女」)
フォロワー1億人という目標を掲げキャンペーンに参加する美衣奈。いつでも配信を行っている(「地球外少年少女」)[c]MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

そして彼ら、彼女らは近未来の、実現がごく近い“電脳メガネ”や、コミュニケーションが図れるほか生活に寄り添う様々な機能を持つAIといったものを生活の一部として過ごしている。この設定はあまりにも魅力的で、“こんな時代がもうすぐ来るかもしれない”と視聴者をわくわくさせてくれる。

当時「電脳コイル」を観ていた世代が大人になった現代では、VRやARが日常的な現実となった。いま「地球外少年少女」を観た子どもたちが大人になった時、どんな未来が待っているのだろうか。視聴者だった子どもが大人へと成長し、アニメで描かれた未来が現実になっていく瞬間を体感できるのも、磯監督作品が長く、そして根強く愛される秘訣なのかもしれない。

文/リワークス(加藤雄斗)

※赤崎千夏の崎はたつさきが正式表記

■「地球外少年少女」
後編は2月11日より新宿ピカデリーほかにて2週間限定で上映中
劇場公開限定版Blu-ray&DVD(前編/後編):2月11日(金)発売 Blu-ray8,800円(税込)/DVD8,250円(税込)
※公開劇場での鑑賞者限定販売

配信:Netflixにて全世界配信中(全6話一斉配信)

■「電脳コイル」
Blu-ray Disc Box:40,700円(税込) 販売元:バンダイナムコアーツ
配信:Amazonプライム・ビデオほか、各種配信サービスにて好評配信中

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