『ナイトメア・アリー』に坂本眞一、ヒグチユウコも恍惚… 劇場用プログラムには美麗イラストも収録
ギレルモ・デル・トロ監督の最新作『ナイトメア・アリー』が本日ついに公開を迎えた。日本時間3月28日(月)に授賞式が行われる第94回アカデミー賞では作品賞など4部門にノミネートされている本作は、1946年に出版され『悪魔の往く町』(47)として映画化されたこともある伝説的ノワール小説をデル・トロ監督ならではの世界観で再映画化したサスペンス・スリラーだ。
野心的な青年スタン(ブラッドリー・クーパー)は、妖しげなカーニバルの一座で読心術の達人から“技”を伝授され、“感電ショー”で人気を集めるモリー(ルーニー・マーラ)を連れてショービジネスの世界での成功を目指し大都会へと旅立つ。やがて人を惹きつける才能と天性のカリスマ性でトップのショーマンとなったスタン。しかしある日出会った精神科医のリリス・リッター(ケイト・ブランシェット)によって、彼の運命の歯車は大きく狂い始めることに…。
第90回アカデミー賞で作品賞をはじめ4部門に輝いた前作『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)はもちろんのこと、『パンズ・ラビリンス』(06)や『パシフィック・リム』(12)など、独自の美学で映画ファンの心を掴み続ける鬼才デル・トロ監督。前作に引き続きサーチライト・ピクチャーズとタッグを組み、2人のオスカー俳優を含む豪華キャスト陣が一堂に会した本作は、前半のカーニバルの妖しさと、後半のゴージャスかつ巧妙でスリリングな心理戦と、デル・トロ監督の作家性のあらゆる側面を同時に堪能することができる、まさに集大成といえる贅沢な作品に仕上がっている。
それだけに、これまでの作品以上に多くのクリエイターたちに刺激と影響を与えることは間違いないだろう。本作の公開劇場で発売されている劇場用パンフレットには、「#DRCL midnight children」などで知られる漫画家の坂本眞一と、画家・絵本作家のヒグチユウコが本作の世界観をイメージした描き下ろしイラストを添えてコメントを寄せている。
坂本は「僕らは一瞬の幻のような美しい世界を追い求め、仄暗い小路を進んでいく。それが一雫の阿片が見せる悪夢だとも知らずに-」と、ヒグチは「遠い世界を描いているようでいて、これは私たちの人生そのものではないか、とドキリしたそんな映画でした」と、両者とも早くも本作に心奪われたようだ。
本作の劇場用パンフレットは、映画ファンにおなじみの「MOVIE WALKER PRESS 劇場用パンフレットムック」の「サーチライト・ピクチャーズissue」には、クーパーやブランシェットをはじめとした主要キャスト陣とデル・トロ監督のインタビューを掲載。ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの原作小説の翻訳を異なる出版社で務めた矢口誠と柳下毅一郎による対談では、原作者の数奇な人生、『ナイトメア・アリー』を深く知るための本と映画を知ることができる。さらには山崎まどかによるコラムや美術や撮影、音楽など本作を構成する様々な要素の解説などの充実した内容に加え、巻末には今後のサーチライト作品の最新情報も掲載。
現代ハリウッドを代表する鬼才監督が放つダークで耽美な世界観を大スクリーンで堪能したら、是非とも劇場用パンフレットも入手し、本作を隅から隅まで味わい尽くしてみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬