2022年のアカデミー賞を総括!再定義が求められる映画の祭典、アクシデントの影には数々の偉業あり

映画ニュース

2022年のアカデミー賞を総括!再定義が求められる映画の祭典、アクシデントの影には数々の偉業あり

今年のアカデミー賞は、日本で例年よりも大きなニュースとして報道されたのではないだろうか。濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(公開中)が日本映画として13年ぶりに国際長編映画賞を受賞したこと。そして長編ドキュメンタリー賞プレゼンターのクリス・ロックと、主演男優賞候補のウィル・スミスの一件。アメリカでの報道も前代未聞の生放送中の傷害事故一色で、第94回目を数えるアカデミー賞における歴史的受賞の数々の印象が薄れてしまっている。

今年のアカデミー賞ではSNSで募集した映画ファンによる人気映画賞も発表!第94回アカデミー賞を振り返り
今年のアカデミー賞ではSNSで募集した映画ファンによる人気映画賞も発表!第94回アカデミー賞を振り返り[c]Kyusung Gong / A.M.P.A.S.

授賞式のテーマ「映画ファン大集合」はさながらブラックジョーク

それでなくても、開催前から波乱ばかりだった。技術や短編賞など8部門を放送時間外に発表し短縮して放送、SNSで人気作品投票など、テレビショーとしての見せ方を優先しているような策はすべて批判の元になった。番組をプロデュースしたのは、『ストレイト・アウタ・コンプトン』(15)や『ジェイコブズ・ラダー』(20)などの製作を務めるウィル・パッカー。『ガールズ・トリップ』(17)でパッカーと組んだレジーナ・ホール、そしてエイミー・シューマーとワンダ・サイクスの3人のコメディエンヌが4年ぶりに司会を務めた。ところが、3人は出だしから「女性3人の方が男性1人よりギャラが安い」「『パワー・オブ・ザ・ドッグ』を3回観てやっと半分」と、笑うに笑えない賞味期限切れのジョークを連発していく。あまりにもジョークが滑りまくっているので、この時間に8部門のうちいくつかは発表できたのではないかと思わず考えてしまったほど。

司会を務めた3人のコメディエンヌ、レジーナ・ホール、エイミー・シューマーとワンダ・サイクス
司会を務めた3人のコメディエンヌ、レジーナ・ホール、エイミー・シューマーとワンダ・サイクス[c]Kyusung Gong / A.M.P.A.S.


SNSで募集した映画ファンによる人気映画賞と最も応援したい映画賞は、ザック・スナイダー監督の『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』(21)と『アーミー・オブ・ザ・デッド』(21)がそれぞれ受賞している。そして、アメリカの放送史に残る大失態(クリス・ロックは一瞬真顔になったあとに「テレビ史上最高の瞬間か?」と対応)が起きた。彼はコメディアンなので、どこまで脚本ありのスクリプテッドで、どこまでアドリブかはわからないが、映画の祭典としてこの演出が正しかったのかどうか、検証される必要がある。今年の授賞式のテーマが「映画ファン大集合(Movie Lovers Unite)」だったのは、ブラックジョークのように思える。


第94回アカデミー賞特集

関連作品