“アニメ好き”宇垣美里が荒木哲郎監督作『バブル』に興奮!「まるで無重力のジェットコースター!一緒に飛び回っている気持ちになる」
「2人で過ごした時間も空間も全部大切だから、そのためならなんだって捧げられる」
本作のモチーフとなっているのはアンデルセン童話の「にんぎょ姫」。荒木監督が描いた“沈んだビルの上に座るにんぎょ姫”のスケッチからアイデアを膨らませ、ストーリーを構築していったという。「にんぎょ姫」は王子と人魚の悲恋を描くラブストーリーだが、『バブル』におけるヒビキとウタの関係はそうではないと宇垣は考える。
「“誰かのために犠牲になる”と聞くと悲恋に思えるかもしれません。これは私の感想ですが、『相手のことはもちろん、その人と一緒にいる自分も好きだし、2人で過ごした時間も空間も全部大切だから、そのためならなんだって捧げられる。それは不幸なことなんかじゃないのよ』と、ウタは幸せそうに微笑んでいるように見えて…。『はたして、これは悲恋なのかな?』と考えてしまいました。もしかしたら、そんなふうに思える相手がいることは、一人ぼっちで生きていくよりずっと幸運なことなのかもしれません」。
「おとぎ話のような美しさで、キレイな横顔やキラキラときらめく瞳が印象的」
特に宇垣が惹かれた2人のシーンは、海へ落下したヒビキをウタが助けだす“出会い”の場面。「にんぎょ姫」の冒頭、海で溺れた王子をにんぎょ姫が助けるシーンと重なる。海中に沈んだビルや漂流する車や電車といった荒廃した世界で出会う2人の姿は、幻想的な美しさを放っている。
「2人の出会いはまるでおとぎ話のような美しさで、キレイな横顔やキラキラときらめく瞳が印象的。ウタの声の強さにも心をつかまれました。ウタが『この人が王子様だ!』と気づいて、拙い言葉でなにかを伝えようとするシーンは観ているこちらも照れちゃって、ヒビキと同じように赤面するくらいツボでした」。
「にんぎょ姫」のラストでは、王子の愛を得られなかったにんぎょ姫は海の泡となることを選んだ。本作でも泡(バブル)は物語の重要なカギを握っているが、焦点が当たるのはこの異常現象のなかで生きる人間たち。泡がなぜ地上に降り注いだのか、なにを意味するのかといった本質的な解釈は観る者に委ねられている。
「背景を説明しきっていないからこそ、想像の余地を残していて、観終わったあとに『あれはどういうことだったと思う?』と誰かと話し合えるところがこの映画のよさなのかなと思います。みなさんもぜひ、いろいろと想像を巡らせながら楽しんでください」。
構成・文/ほそいちえ
1991年生まれ、兵庫県出身。2014年4月にTBSに入社し、アナウンサーとして数々の番組に出演。2019年3月にTBSを退社し、フリーアナウンサーに。マンガ、アニメについての執筆や、現在放送中のTBSドラマ「明日、私は誰かのカノジョ」に出演し、女優としても活躍。