批評家が選ぶ、サンドラ・ブロック出演作ランキング!『スピード』からアカデミー受賞作まで、“フレッシュ”なおすすめ10選
もっとも高い評価を獲得したのは、アルフォンソ・キュアロン監督がメガホンをとった『ゼロ・グラビティ』の96%フレッシュ。本作でブロックは、全編を通してほぼ一人芝居で作品世界を構築。宇宙空間を漂流することになる主人公の恐怖とパニックを見事に体現していく。
第86回アカデミー賞では9部門にノミネートされ、技術部門を中心に7部門を受賞。惜しくも作品賞と主演女優賞こそ逃してしまったが、直前まで最有力と謳われていたほど。当時すでに女優として円熟期に突入していたブロックの演技力がまざまざと証明されたと同時に、ほかの宇宙SFとは一線を画する表現力の豊かさ。映画史的に重要な一本とあって、高評価も納得だ。
次いで高い評価を獲得したのはブロックのブレイク作である『スピード』の94%フレッシュ。主演を務めたキアヌ・リーヴスと共に一躍脚光を浴びたブロックは、同作の大ヒットを受けて続編の『スピード2』(97)では主演を務めることに。ところがこれがブロックの運命を大きく変えてしまうこととなる。
3000万ドルの製作費で10倍以上の興収を叩き出した1作目に対し、1億6000万ドルの製作費が投じられた2作目は、製作費のほぼ同額しか回収することができず、興行面はおろか批評面でも大失敗。2作目の批評家からの好意的評価の割合はなんとたったの4%と、ブロック出演作史上最低の数字。ブロックはつい先日、海外メディアのインタビューで「出演したことが恥ずかしい作品」と『スピード2』のタイトルを挙げて全否定。25年経ったいまでもそのダメージを引きずっているようだ。
それ以後は『微笑みをもう一度』(98)や『プラクティカル・マジック』(98)などの“悪くない”作品に出演し、『プリンス・オブ・エジプト』(98)では声優にも挑戦。そして自ら製作を務めた『デンジャラス・ビューティー』(00)でゴールデン・グローブ賞候補になり人気再燃の兆しを見せるのだが、2005年に公開された同作の続編がまたしても批評的惨敗を喫し大ピンチに。しかしその直後に公開された『クラッシュ』がアカデミー賞作品賞を受賞。なんとか面目が保たれる。
俳優としての大きな転機はやはり2009年に出演した3作品だろう。66%フレッシュを獲得した『しあわせの隠れ場所』でゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)とアカデミー賞主演女優賞をダブル受賞。また久々のラブコメ挑戦となった『あなたは私の婿になる』でもゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)にノミネートされる。
そしてさらに、『ウルトラ I LOVE YOU!』(09)では最低映画を選ぶゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)の最低主演女優賞にノミネートされ、よもやの受賞を果たす。それだけではマイナスイメージになりかねないところだが、ブロックは受賞者の多くが出席しないことで知られるラジー賞授賞式に大手を振って出席。しかもその翌日にアカデミー賞を受賞し、連夜の受賞劇にハリウッドは大盛り上がり。一気にブロックのエンターテイナーとしての評価が急上昇することとなった。
また同年には“映画興行にもっとも貢献したスター”のランキングにおいて、女優として10年ぶりにトップに輝く。そうして幕を開けた低迷知らずの2010年代はかなり充実。『ゼロ・グラビティ』での名演をはじめ『オーシャンズ8』では超豪華女優陣を牽引。Netflix映画『バード・ボックス』(18)は記録的な視聴数を叩き出すなど大活躍。
そして79%フレッシュを獲得した最新作『ザ・ロストシティ』(公開中)では、ひょんなことから南の島へと連れて行かれる恋愛小説家を演じ、コメディとアクションの両面で持ち味を発揮する。王道の娯楽映画で高評価を獲得したことに加え、北米ではロングヒットを記録し興収1億ドルを突破。
1964年のブロックは、今年で58歳を迎える。今後もブラッド・ピット主演、伊坂幸太郎原作の『ブレット・トレイン』(9月1日公開)などが控えており、マネーメイキングスターとしてのさらなる飛躍と共に、唯一無二のスターパワーで、年齢や性別の壁をぶち破る活躍を見せてくれることだろう。
文/久保田 和馬