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「ピース オブ ケイク」「溺れるナイフ」に通じる要素も…ジョージ朝倉の作家性でひも解く「ダンス・ダンス・ダンスール」の魅力

コラム

「ピース オブ ケイク」「溺れるナイフ」に通じる要素も…ジョージ朝倉の作家性でひも解く「ダンス・ダンス・ダンスール」の魅力

センシティブでピュアな10代の少年少女の危うさ

まず、ジョージ朝倉ワールドのキーワードとなるのが“思春期”である。デビュー後しばらくはおもな掲載誌が少女マンガ誌だったこともあり、基本的に登場人物たちの多くは高校生。また、地方で暮らす中学生たちのセックスも含んだ生々しい恋愛模様を描く「ハートを打ちのめせ!」や、映画版と違って、小6の12歳から物語が始まる「溺れるナイフ」など、メインキャラが小中学生の話もめずらしくない。

破裂しそうな十代の恋と感情のせめぎ合いを描く「溺れるナイフ」(第1巻)
破裂しそうな十代の恋と感情のせめぎ合いを描く「溺れるナイフ」(第1巻)著/ジョージ朝倉 発売中 価格:472円(税込み) 講談社刊

「ダンス・ダンス・ダンスール」でも、潤平、流鶯、都のメインキャラ3人は中2。彼らが“生川はるかバレエ学校ボーイズサマースクール”で出会う田倉大和(声:西山宏太朗)や安田海咲(声:天﨑滉平)は中3。潤平の心を痺れさせた少女、生川夏姫(声:福圓美里)は小6という設定。それぞれすでに目標を掲げ、バレエに人生を捧げている彼らには、普通の同年代と比べて大人っぽい面もある。だが、そんな彼らがある種の傲慢さ、無自覚さ、渇望感、焦燥感、自尊心、恥じらい…といったコントロール不能な感情に振り回されてしまう痛々しい姿は、まさに思春期そのものだ。ジョージ朝倉はセンシティブでピュアな10代の少年少女の危うさを描くのがとても巧い。

センシティブでピュアな10代の少年少女の危うさも描かれる(「ダンス・ダンス・ダンスール」第2巻)
センシティブでピュアな10代の少年少女の危うさも描かれる(「ダンス・ダンス・ダンスール」第2巻)著/ジョージ朝倉 発売中 価格:693円(税込み) 小学館刊

“キラキラしたもの”への希求心と感性の鋭さ

理屈や言葉では表現しきれない“キラキラしたもの”への希求心を強く抱いていることも、ジョージ朝倉作品のキャラクターたちの特徴だ。潤平は幼少期に、ある男性プロダンサーの踊りを目にした瞬間、「ビリビリ、ビカビカ、ドッカーン」と瞳に星が散り、バレエの虜になってしまう。心に衝撃が走った時に、なにかがスパークし、発光して見えるという描写は、ジョージ朝倉作品では恋愛の初期衝動や高揚感を表現するシーンでもおなじみだ。星がビリビリ、バチバチと爆ぜる感覚こそが、その後の潤平を突き動かす原動力となっていく。

【写真を見る】幼いころの潤平がクラシックバレエを見て目を輝かせるなど、ジョージ朝倉作品ではおなじみの初期衝動や高揚感を表現するシーンも
【写真を見る】幼いころの潤平がクラシックバレエを見て目を輝かせるなど、ジョージ朝倉作品ではおなじみの初期衝動や高揚感を表現するシーンも[c]ジョージ朝倉・小学館/ダンス・ダンス・ダンスール製作委員会

こうした感性の鋭さからもわかるように、ジョージ朝倉作品の主人公たちは、たいてい直感型、かつ直情型のキャラクターである。とにかくパワフルで、自分の心に素直に行動する。普通の人なら躊躇するような場面でも、がむしゃらに突っ込んでいき、困難なことが起こっても、決してくじけることなく、前に進んでいく。恋愛では一目惚れのパターンが多い。もちろん繊細な面も持ち合わせているが、常に“好き”という自分の感情のほうが勝る。

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