「ソー」最新作はガンズ、「アイアンマン」はAC/DC…ツェッペリン、ニルヴァーナをフィーチャーしてきたMCU史をプレイバック

コラム

「ソー」最新作はガンズ、「アイアンマン」はAC/DC…ツェッペリン、ニルヴァーナをフィーチャーしてきたMCU史をプレイバック

マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)の最新作『ソー:ラブ&サンダー』(公開中)の予告編を見て、胸の高鳴りを覚えたロックファンは少なくないだろう。というのも、このトレーラーではハードロックの重鎮ガンズ・アンド・ローゼズの1988年のヒット曲「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」が、印象的なイントロから延々とフィーチャーされているのだ。実際のところ、MCUとロックは浅からぬ関係にあり、これまでにも多くの作品で、有名なロックナンバーが映画を盛り上げてきた。改めて、それらを振り返ってみようと思う。

ソーはハードロックがよく似合う(『ソー:ラブ&サンダー』)
ソーはハードロックがよく似合う(『ソー:ラブ&サンダー』)[c]Marvel Studios 2022

トニー・スタークのお気に入りバンドといえば、AC/DC!

まずはMCUの記念すべき第1作『アイアンマン』(08)。冒頭で、オーストラリアのハードロックバンド、AC/DCの「バック・イン・ブラック」が流れるが、これは主人公トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)のお気に入りのバンドという設定によるもの。これを受けて、『アイアンマン2』(10)のサウンドトラック盤は、AC/DCのベスト盤も兼ねるという驚きの展開となった。劇中ではオープニングで「スリルに一撃」、エンディングでは「地獄のハイウェイ」をフィーチャー。『アベンジャーズ』(12)では、キャプテン・アメリカの窮地を救うべく現れるアイアンマンの雄姿に「シュート・トゥ・キル」が重なり、強い印象を残した。

ちなみに、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)では、亡きトニーの面影をスパイダーマン/ピーター・パーカー(トム・ホランド)に重ね合わせたハッピー・ホーガン(ジョン・ファヴロー)が、「音楽は任せろ」と言って「バック・イン・ブラック」を流している。しかし、当のピーターはイントロを聞いて、「レッド・ツェッペリン最高!」と勘違いしているユーモラスな場面がある。

疾走感あるスパイダーマンのウェブ・スイングにぴったりなラモーンズ

そのピーターだが、ハードロックよりもむしろ、ニューヨークに住む下町っ子らしくニューヨーク・パンクがお好みの様子。『スパイダーマン:ホームカミング』(17)では元祖パンクバンド、ラモーンズの「電撃パップ」をバックに市街地を飛び回る。このナンバーは、エンドクレジットでもフィーチャーされ、ピーターの若々しさを強調することに。続く『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』でもラモーンズは起用され、「アイ・ウォナ・ビー・ユア・ボーイフレンド」が、MJ(ゼンデイヤ)とのロマンスを盛り立てた。

70'sロックにあふれた「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」


ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14)の主人公スター・ロード(クリス・プラット)は、亡き母が遺したミックステープをいつも聴いているお陰で、1970年代のロックが身に染みついている。映画の冒頭、オーブを強奪する際にウォークマンで聴いているのは、ネイティブアメリカンのロックバンドとして人気を博したレッドボーンのヒット曲「カム・アンド・ゲット・ユア・ラブ」。盗みの真っ最中でも、ミドルテンポのこの曲に合わせてノリノリで踊るその姿が微笑ましい。ちなみに、続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17)のオープニングでは、戦闘に忙しいスター・ロードに代わり、ベイビー・グルートがエレクトリック・ライト・オーケストラの「ミスター・ブルー・スカイ」に合わせてダンスを披露する。

ニルヴァーナなど90'sオルタナ・ロックの楽曲が印象的な『キャプテン・マーベル』

キャプテン・マーベル』(19)では時代背景に合わせて、1990年代のオルタナ・ロックが多数使用された。なかでもメジャーなのは、主人公キャロル(ブリー・ラーソン)が人工知能の中枢で超高性能AIと会った際に流れるニルヴァーナの「カム・アズ・ユー・アー」。アネット・ベニングが扮するAIは、この気だるいメロディが印象的なナンバーをレコードでかけていた。また、この曲が収録された名盤「ネヴァーマインド」のプロデューサー、ブッチ・ヴィグが率いるバンド、ガービッジの「オンリー・ハッピー・ウェン・イット・レインズ」も、失われた記憶の糸を手繰り寄せてバーを訪れたヒロインの脳裏に、フラッシュバックする曲として使用されている。

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