富野由悠季総監督が読者の疑問に次々回答。『Gのレコンギスタ』映画化へのこだわりから制作秘話まで“富野節”炸裂!

インタビュー

富野由悠季総監督が読者の疑問に次々回答。『Gのレコンギスタ』映画化へのこだわりから制作秘話まで“富野節”炸裂!

2014年に放送されたテレビシリーズ全26話を、全5部作の劇場版として再構築した『Gのレコンギスタ』。富野由悠季総監督が監督業50年の集大成として、大幅にブラッシュアップを行った第4部「激闘に叫ぶ愛」(公開中)と第5部「死線を越えて」(公開中)が連続公開され、8年間にわたるシリーズがついに完結を迎えた。

MOVIE WALKER PRESSでは、Twitterにてユーザーから質問を募り、富野監督ご本人に答えてもらう“AMA”(=Ask Me Anythingの略。ネットスラング風に言うと「〇〇だけど、なにか質問ある?」といった意味)を実施。『G-レコ』の制作秘話はもちろん、富野監督がこれまで描いてきたテーマへの想いや、プライベートが垣間見える話までたっぷりとお届けする。

「テレビアニメが映画化される場合、ストーリーをテレビと完全に別物にしたり、外伝的な話になる場合が多々ありますが、富野監督はテレビを映画化するとき、再編集をメインにされていらっしゃいます。そこに富野監督のこだわりはありますでしょうか?また、再編集中にストーリーを変えたくなったりしないのでしょうか?」(50代・男性)

「機動戦士ガンダム」をはじめ数々のロボットアニメを手掛けてきた富野由悠季総監督
「機動戦士ガンダム」をはじめ数々のロボットアニメを手掛けてきた富野由悠季総監督撮影/河内 彩

「なんらかの作品を映画化する際、まず、ベースとなるストーリーがありますよね。そして再編集というのは部分的な修正です。そこで違う要素を入れると、新作になってしまいます。僕の場合はだいたい、まずテレビをやったうえでの作業になるので、新作としての新しい要素を付け加えることは絶対にしません。

そしておそらくこの方は、原作の小説なり漫画なりを映画化する際に、いろんなことを整理した場合、それは映画オリジナル=新作になるんですか?と訊きたいんだと思います。原作を利用した瞬間に、実を言うと、新作には絶対ならないんです。創作物とは変なもので、力のある原作は漫画化されようが映画化されようが舞台化されようが、元の形は残ります。だから、それは全部原作付きになります。原作というものにはすごい力があって、それを突破することはできません」

「ベルリの物語は最終回のラストシーンからが始まりで、『G-レコ』はそのプロローグだったんだと感じました。『G-レコ』はとんでもない作品で、こんなやり方ができるのは間違いなく富野監督だけです。その手法はいったいどうやって思いついたんでしょうか」(30代・男性)

第5部「死線を越えて」で完結を迎える『Gのレコンギスタ』
第5部「死線を越えて」で完結を迎える『Gのレコンギスタ』[c]創通・サンライズ

「この方にお伝えしたいのは、小説や舞台など、もう少し数を読む、観ることをお勧めします、ということです。だいたいの物語は元に戻るんです。特にさっき言ったとおり、原作付きで何度も再演されたり映画化されたり漫画化されたりするものは、本当に力があるんです。力がある作品は、基本的に元に戻ります。ですから、これは僕の方法論じゃなく、優れたものとはそういうものなんです。もし僕の仕事の仕方にそうしたものが見えるのだとすると、それは僕の作るものが名作だからです(笑)」

「ベルリ役に石井マークさん、アイーダ様役に嶋村侑さんを起用した決め手はありますか?」(30代・女性)

テレビシリーズ時は新人だった石井をベルリ役に抜擢している
テレビシリーズ時は新人だった石井をベルリ役に抜擢している[c]創通・サンライズ

「すごくイヤな答え方をすると、キャラクターに合っているからです。役者って変わらない…というより変えられないんですよね。だから間違っちゃいけないし、かなり神経を使っています。単純に声の質や色合いだけでは決められない部分があるんです。そして特に最近は、声優が人気の職業になっちゃったおかげで、みんなスケジュールが埋まっていて、自由に使えないという困った事態が起こり始めています。なので常に新人は探してますが、時折前々から存じ上げている方にお願いすることもあります。

ただ、これがまた難しいところで、その役者の“声を気に入っている”という理由でオファーをしてしまうと、使っちゃった瞬間に『まあこんなものかな』と思えてしまうこともあるんです。そこに甘んじると、すごく保守的な監督、演出家になってしまう。演出や脚本に力がなければ、新鮮味がなく役者そのものになってしまうので、『まあいいよね』と妥協をすることは、かなり危険だと感じています。

もちろん最初から当て書きで企画されている映画や演劇もあるし、悪いわけではないんだけども…。色気のない言い方をしますが、みんな生活のためにやってますね(笑)。新人を使うというのは、こちら側にかなり余裕がないとできないんです」

「ピンク髪の女性キャラは嫌われ者だったり不幸なまま死んだりと扱いが悪いですが、富野監督はピンク髪がお嫌いなんですか?『G-レコ』でも、ピンク髪女子はみんな不幸になってます」(40代・女性)

『G-レコ』に登場するピンク髪の女性キャラの一人、バララ・ペオール
『G-レコ』に登場するピンク髪の女性キャラの一人、バララ・ペオール[c]創通・サンライズ


「それは意識してなかったですね。ちなみに、アニメの世界で髪の毛をグリーンにしたのは僕が最初なんですよ。だから髪の毛に色をつけることに抵抗はなかったはずなのに、きっとどこかでピンクの髪の毛がきらいなんですね。でもマリリン・モンローのブロンドの髪は何一つ気にならないから、必ずしも明るい髪の毛の色が嫌いなんじゃないんだよね。

ちなみにここ数年、よくモンローの映画を観ています。というのもある時期、僕自身が病んでしまうような気分が続いたんです。自分の頭の中がガンダム的なメカで埋め尽くされて、劇が書けない、物語が作れない、となった。物語っていうのは人間のドラマなのに、巨大ロボットが出てくると気が済んじゃう。これを突破するにはどうしたらいいんだろうかって。

取材前日にもモンローの映画を観たと話す富野監督
取材前日にもモンローの映画を観たと話す富野監督[c]Everett Collection/AFLO

なぜモンローに行き着いたかわからないんだけど、彼女の初期の映画を2、3本観て、『この人の姿かたちが好きなんだよね』『女っ気ってこれなんだよね』と思って、それから3年間くらい彼女のポスターを壁に貼って見続けていたんです、必死で。そうしないと、男と女とか女同士の人間ドラマが書けなくなる。メカ漬けってのはそれくらい恐いんですよ。戦闘機なり巨大ロボットなりが飛んでくれば気が済んじゃって、物語が作れなくなるんです」


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